マチノソラ

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「カンパーイ！」

ニコニコ無邪気に笑う顔は無駄に整っていて、あの総務の子以外にも誰々に告白されたという噂を何度か聞いたことがある。
顔は置いといて、こういう奴に愛される人はきっと幸せなんだろうな。


「特上二人前くださーい」

「ちょっとは遠慮しなさいよ」

「じゃあ上カルビも追加でお願いします！」

「ねぇ聞こえてる？耳大丈夫？」


でも、最近ちょっとしんどかったから、気分転換には丁度良かったかな。


「お、飲みますねぇ！」


ぐいっとジョッキを傾けて一気に飲み干すと、初めて会ったあの日の飲み会を思い出した。


横で笑って、優しくて、楽しくて………

もう忘れよう、元々別世界の人だったんだから。


「次もビールにします？」

「……………日本酒…」

「Aさん日本酒もいけるんですか？」

「まぁね………」


ジュージューと焼ける煙の向こうにいるのが、倫也さんだったらいいのに。
って、もう会うわけもないのに女々しく考えてしまう自分が嫌だ。

それに、もう会ったって……………
最後に見た玄関ドアに消されていく横顔を思い出す度に、左手がじんと痛くなる。


トクトクと継がれたアルコールの濃い匂いのお猪口をじっと見つめる。


「Aさん？」


くいっと一気に入れると、体温が一度あがったような感覚に侵される。


「いきますね〜。今日は遠慮しないでじゃんじゃん飲んで下さいね〜なんたってAさんの奢りですから」

「……………」


「Aさん……………？」


返ってくるはずのツッコミが無くて、不思議そうに顔を覗き込んでくる顔がじわりと滲む。


「Aさん、大丈夫ですか？」

「大丈夫っていってるのに」

「え？」

「そんな怒んなくてもいいじゃん……」

「Aさん？」

「なんで……………」

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