あの日の恋が嘘みたい。【歌い手】

＊ ページ42

「ここからどう変わるか、だよっ！」

だから、いっぱいAに会いに行く。

何されたっていい。

あと少し、僕に残された時間を、Aと一緒に過ごしたい。



「あと、一週間もつかどうか…といったところです。」


日に日に大きくなっていく僕の羽。

日に日に弱くなっていく僕の体。

走ることができなくなって、

歩くことができなくなって、

病院のベッドから起き上がることもできなくなってきて。


大好きな、歌も歌えなくなってきて。


先生たちの優しさもあって、今僕はAの隣のベッドに寝ている。

僕たちが出会った、大切な日「４月２７日」と同じ番号のこの部屋。

Aは覚えていないだろうけど。


カーテンをめくれば、Aはすぐそこにいるのに。

こんなに、哀しいほど愛しているのに。

Aは、僕のことを「なぜか彼氏面してる嫌いな奴」と思ったまま、永遠にお別れするんだろうなあ。

なんて、哀しいんだろう。

いやだなあ、こんなお別れ、したくないよ。


…時間、止まってほしいなぁ。

その願いも叶わず、一週間は瞬く間に過ぎていった。




今日は、僕の誕生日。

Aは、いつも一番に祝ってくれたのに。

憶えてもいないなんて。

そして、先生に「残り一週間」って言われてからちょうど一週間がたつ。

僕、今日死ぬのかな。


「…ねえ。ちょっと、来てくれる…？」

カーテンをそっとめくって、Aを呼ぶ。

「は？なんで行かなきゃいけないの？」

といいながらも、来てくれるAはやっぱり優しい。


「…っこれ、そらるさんたちに渡してほしいの、」

たくさんの手紙を託す。

「それから、これはAに。」

「いらないよ手紙なんか。」

Aは、手紙をゴミ箱に捨てようとする。

「いらなかったら、そらるさんにでも渡しといてくれたらいいから…。」


あ、待って。

息が、苦しい。


もうだめかも。


僕は、嫌がるAを抱きしめて、ちゅ、と優しくキスをした。



「愛してる…。」


噂だけど、ホントだったらいいな。

「忘愛症候群は、愛する人の死が唯一の治療法」


そしたら、僕が天使になったあと、思い出してくれるよね。

今までのことも、僕のことも。

そんな願いをこめて、そっと左手の薬指に指輪をつけた。


ダイヤモンド、ラピスラズリ、シトリン。

三つの宝石が、きらりと光った。





『ダイヤモンド』永遠の絆 永久不変

『ラピスラズリ』永遠の誓い 愛

『シトリン』甘い思い出

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