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最後に通話してから、1週間ほど経っただろう。
あの日を境にAと一切連絡がとれなくなっていた。
何かあったのだろうか…家に行ってみようか。そう思いながら帰宅し
ポストを見ると、かわいらしいオレンジの封筒が入っていた。
俺宛であり、差出人は……Aだった。
「は…?手紙…?」
いきなりなんだろう。
帰宅してからすぐに封筒を開ける。そこには到底受け入れられないことが
そして……彼女の気持ちが書かれていた。
『翔太へ
この手紙があなたの元に届いているということは、私はすでにこの世にはいないね。
まず、謝らないといけないことがあるの。私はあなたにいくつもの嘘をついていた。
翔太は何回もご飯に誘ってくれた、ずっと断ってきたけど本当はすごく行きたかった。
でも、すでに動くことが難しい体になってしまっていたの。ごめんね。
あなたと再会できた、私にとって最後の1年間はすごく楽しかったよ。
それこそ、病気のことを忘れられるくらいすごく楽しかった。
これからいうことはもしかしたらあなたを苦しめてしまうかもしれないけど…
私の最後のわがままだって、許してほしいな。
翔太のことが、好きでした。
永く生きることができないとわかっていたから、直接伝えられなかったの。
でも、この気持ちを伝えないままは嫌だったから…最期に言わせてね。
これから、長い人生が続くと思う。楽しいことも辛いこともあると思うけど
挫けないで、乗り越えていって。私の分まで人生楽しんでね!翔太なら大丈夫。
そして、歌い手の天月としてたくさんの人に声を届けてね。
電話も、チャットもあなたと話してた時間は本当に幸せでした。ありがとう。大好き。』
「は…?嘘…だろ…?」
悪い冗談だ、冗談にも程がある……そう思っていた俺の元にその事実を裏付けるがごとく
高校の同級生から連絡が入った。内容は……彼女の他界と葬儀についてである。
「死んだって…なんで…そんな様子見せなかったじゃん……!!」
文字がにじんでいる。俺の涙跡の他にもにじんで乾いた跡があった。
泣きながら、書いてくれたのだろうか…いや、そこじゃない。
彼女も、俺のことを好きでいてくれたのか。両想い…だったのか。
「A……!!」
今までの思い出が浮かんでは消えていく。けれど彼女はもう…いないのだ。
何も考えられなくなり、俺はふらりと外に出た。
封筒の中に入っていたアネモネの花に気が付かないまま。
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あゆ(プロフ) - どのお話も切なくて、思わず1話読み終わる事に泣いてました…w最高でした!ありがとうございます…(´;ω;`) (2019年7月25日 21時) (レス) id: e76134e0bd (このIDを非表示/違反報告)
夏々 - まふくん……悲しすぎる(;_;) (2018年11月22日 23時) (レス) id: ca7b93074f (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり - かのこゆりです!天使病のお話を書かせていただきました。お褒めの言葉、ありがとうございます!緊張していたのもあり、正直あまり自信がなかったのですが、そういっていただけて嬉しいです。読んでくださり、本当にありがとうございました! (2018年11月22日 4時) (レス) id: 459f75f8c6 (このIDを非表示/違反報告)
sera(プロフ) - ぬこさん» 坂田さんの小説の作者、seraです。私の書いたものが良かった、と書いてくださったのでコメント返しさせて頂きます。そう言ってくださりありがとうございます。これからも私含め、他の作者様のこと、応援よろしくお願い致します! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
ぬこ - 凄く感動しました。特に、坂田さんの入院(?)のやつと、まふまふさんの天使病のやつです。めっちゃ泣きました!これからも頑張ってください! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 4fbcbbbe7e (このIDを非表示/違反報告)
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