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冬の冷たい海に身が投げ出される。
あ、鎖あるから落ちる。
ーーこぽこぽ
沈む、沈む。
あーあ、死んじゃうんだ、私。
もっと生きたかった。したいこといっぱいあったのにな。
老後まで待っとこうとか言ってらんないよ、馬鹿。
ーーこぽこぽ
冷たい、冷たい。
親孝行も満足に出来なかったや。
ごめんねお父さん、お母さん。私の代わりにあの女に一発入れといてね。
ありがとう、愛してる。
ーーこぽこぽ
暗い、暗い。
あぁ、来世があるなら、たくさん好きなことしたい。
人って、早く死んじゃうんだぁ。後で、なんてないんだぁ。
苦しい、苦しい。
ーーこぼっ
冷たさ、暗さ、苦しさに、意識が飛びかける。
何かが鮮明に脳裏を駆け巡ったけれど、酸素のない頭では思考が上手く回らない。
桃矢「A!」
ーーあ、パパの声
大きな手で掬い上げられ安心感を覚える。
貴方「ゲホッ、ゲホッ」
桃矢「大丈夫や、落ち着いて息しろ」
咳き込む背をぽんぽんと叩いてくれる掌。
あったかい。
息が整い始めると、ゆるゆると落ちてくる瞼。
桃矢「寝てええよ」
うん、おやすみなさい、パパ。
ーーあれ?
ーーパパって、誰?
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作者名:mol/L | 作成日時:2022年8月3日 20時