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気付けば花垣家のベッドで横になっていた。
貴方「あ」
そうだ。
あの後呆然としている間に全てが処理されて、私は叔母夫婦に引き取られこの家へやって来たのだ。
貴方「……そっかぁ」
肉体年齢の影響というのは存外に大きかったらしい。前世と同じならばあれほどまで取り乱しはしなかっただろう。ショックは同じだけでも自我は保てたはずだ。
それにしても茫然自失にも程があるのではないだろうか。ハッと気付けば引越し終了とか笑えない。
お陰様で満足にお別れも済ませられなかった。仁さん達はただただ抱き締めてくれたっけ。今度会ったらお礼をしないと。
キュッと握り締めていた物を箱から取り出し、手のひらに丁寧に乗せて見つめる。
お父さんが大切にしていたピアス。鬼神なんて呼ばれてたヤンチャ時代にはトレードマークにもなっていたという、鬼灯のピアスだ。
大事な大事な形見。
貴方「大事にするね」
そうだ。
こちらでも黒装束をやろう。今度は、この鬼灯を身に付けて。
関西にいた頃の私は結構ヤンチャしていた。お父さんや京極組の皆々様が悪いノリして仕込んでくれたお陰で、チャカもドスもつかえちゃうような物騒な小学生女児になってしまったのが大きい。
あと、周りが荒くれ者ばかりなので幼い精神は簡単に影響を受け、口調は悪くなったしそこそこヤンチャになってしまったのだ。
うん、教育のせい。私悪くない。
決まって黒ばかりの服に顔が隠れるように目深に被った黒帽子で、いつしか“黒衣の舞姫”とか“黒揚羽”なんて呼ばれるようになった。はっっっず。
散歩の時に黒い服着てたら絡まれたのが始まりだったんだけど、なんだかんだ楽しかったよ。名前は恥ずかしいけど。なぜ厨二センス。
とは言っても不良ってわけじゃなかったんだよ? 売られたり、巻き込まれたりしてただけで。片足くらいだから突っ込んでたの。にしたって治安悪かったけども。
こういう経緯もあってか、1人フラフラする時のコスチュームは全身黒色コーデに黒帽子、黒マスクで固定されてしまったのだ。お陰で黒い服増えたね。黒好きだから困らないけど。
そんな黒衣装備に鬼灯のピアスを追加して、東京でもフラフラ散歩を始めたのが最近だ。
関西に負けず劣らず、いや勝つ勢いで不良が多い。流石ヤンキー漫画の舞台。
右見たら、いる。左見たら、いる。前見たら、いる。後ろ見たら、いる。
うん、お見事! フルコンだ!
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作者名:mol/L | 作成日時:2022年8月3日 20時