30話 ページ30
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「…先輩、このままでも全然いいんですけど、僕の家近いので、行きませんか?」
「……うん」
そう言って立とうとして崩れこんでしまう。
一応ヒートなのだ。頑張って立とうとするゆきを心配そうに見た真冬はしゃがみこんで背中を差し出した。
ゆきはなんの躊躇もなくそこに倒れ込む。
もう疲れて頭が回らない。
どうせ意地を張って歩いても迷惑をかけるだけだ。
だったら最初から折れた方がいい。
暗い夜道を街灯が照らす。
とぼとぼと歩いているうちに眠くなってきた。
相川くんの背中が良すぎるせいだ。
仕方ない。
そのまま、気がついたら意識がなくなっていた。
・・・
「…先輩、先輩、起きてくださーい」
「…んー、」
ゆさゆさと揺らされて目をゆっくり開ける。
目の前にはまあでっかい家があった。
でかい。ほんとにでかい。
まじでなんでもありか…
「……相川くんって、ほんとハイスペックだね」
「そんなことないと思いますけど、それでまた釣り合わないーとか考えるのはやめてくださいね」
「うー…」
図星である。
めっちゃ思った。
だって、容姿端麗で、文武両道で、お金持ちとかもはや怖いよ。
神様ちょっと偏りすぎじゃない?
むしろ考えない人いないと思う。うん。
…まあ、言ったら色々されそうなので心の中に止めておいた。
そのまま相川くんは家に入って自分の部屋に向かう。
勿論俺を背負ったまま、靴だけ脱がして連行だ。
今思ったけど、相川くんの家も両親があまり帰ってこないのだろうか…
数少ない共通点だと思いながらも、少し悲しい気持ちになった。
俺が浮かない顔をしてるのに気づいたのか、少し不機嫌そうにいつもと違う強引な形で俺を部屋に押し込んだ。
また座り込んでしまうゆきを抱き上げて、ゆっくりベッドに下ろす。
月明かりが窓から差し込んで、二人の顔を照らす。
それはとても幻想的であった。
元々二人共現実離れした容姿なのだ。それを更に引き立たせるようなものである。
少しの沈黙と共に静寂が訪れる。
だが自然とそれは居心地の悪いものではなかった。
むしろ心地よかった。
まるでこの世界に二人だけのような気がして、ずっとあっていた目をそらす。
何となく恥ずかしかった。
そんな俺の顔を少し覗き込むようにして見てきた相川くんに驚いてまた背けようとして、強引にキスをされる。
少し触れただけのそれをして、相川くんは俺の肩に頭を乗せた。
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ぷわ猫 - なんかすっごい好きです←素晴らしい神作ありがとうごさいます、、、!癒しすぎる、、、 (2020年4月8日 23時) (レス) id: 82f2e315dc (このIDを非表示/違反報告)
どーる(プロフ) - ライ@寂しがりやの泣き虫テディベアさん» 私もこういう女の子好きなんです!! (2017年10月23日 4時) (レス) id: b65a035319 (このIDを非表示/違反報告)
どーる(プロフ) - 藍薇さん» 素直に嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2017年10月23日 4時) (レス) id: b65a035319 (このIDを非表示/違反報告)
どーる(プロフ) - む犬さん» ありがとうございます!励みになります(*´^`) (2017年10月23日 4時) (レス) id: b65a035319 (このIDを非表示/違反報告)
ライ@寂しがりやの泣き虫テディベア(プロフ) - 柳さん大好き… (2017年10月16日 16時) (レス) id: 799577fb0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どーる | 作成日時:2017年8月22日 22時