【テニスの王子様】この淡い物語に終止符を。【短編集】 (ページ2)

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ある日、丸井君に屋上に来てくれといわれた。
何を言われるのか、薄々勘づいていた。

「別れよう。」

思ってた通りだった。
もう丸井君には愛想が尽きた。別れたっていい。

…何で泣きそうになってるんだろう。

自分のことなのに、目頭が熱くなっている理由がわからない。けれど、そんなことより丸井君が放った言葉が理解できなかった。

「おまえが浮気してるところ見てたら辛いんだよ！」

「……は？」

どうしてそれを、丸井君には言われなきゃなんないの？私の方が丸井君よりも辛いはずだよ？

「丸井君だって、丸井君だって浮気してるくせに！なんで私が言われなきゃなんないの！？」

「はぁ？どういう事だよ！、っておい！」

丸井君の言葉も聞かずに屋上を出た。
階段を駆け下りて無我夢中で走る。どこへ行くかも決めずに。

段々視界がぼやけていく。どれだけ拭いても、涙は溢れ続けるばかりだ。
涙が溢れる理由なんてもう分かっている。

あぁ、私って、丸井君のこと大好きだったんだなぁ。

浮気してたのも強がってただけ。

『別れよう』

その言葉を聞きたくなくて、丸井君から逃げていた。

ドンッ。

「あっ、ご、ごめんなさい！」

何も考えずに、全速力で走りながら角を曲がろうとした時、誰かとぶつかってしまった。

「…A？どうしたんじゃ、そんなに泣いて。」

独特な喋り方とこの声。

「仁王君…。あっ、あぁ、これはさっき目にゴミが入っちゃって…。」

丸井君とのことを悟られたくなくて、咄嗟に嘘をつく。

「目にゴミが入っただけじゃそこまで涙は出んじゃろ。」

涙の量で察したのか、嘘を見抜かれた。
仁王くんが、嘘が下手じゃのう、と微笑みながら私の頭を撫でる。

丸井君も、よく頭を撫でてくれたな。

そう考えた途端に涙がどっと溢れ出す。
その様子を見た仁王くんは、慌てて私の背中をさすってくれた。

私、泣いてばかりだな。

「…丸井にやられたんじゃろ。」

「な、なんで知って…」

そこまで言って気づいた。仁王君の言葉に驚いて咄嗟に言葉を返してしまったが、これでは自分から丸井君との事を認めてしまっているではないか。

「やっぱりな。…何があったんじゃ。」

さすがにもう隠せない。
私はこれまでのことを全て仁王君に話した。