四十話 よろしくです! ページ1
「おい、これはどういうことだ双六一」
「あぁ?看守長の話聞いてなかったのか?」
「聞いている。俺が言っているのはそういうことではなく、なぜその研修予定の看守が車椅子に乗っているのか、だ」
「初めまして!新人看守の音無Aです!こんなお姿で申し訳ありませんが主に雑用を得意とし書類整理など任せてくだされば役立つかと思います!」
いつものように元気よく挨拶をする私ではあるが四舎の看守部長の四桜犬士郎さんは困惑したように私を見下ろしていた。
そう、私が車椅子に乗ることになったのは昨夜のことが原因だ。
脱獄をした13房の彼らの一人である囚人番号11番のウノくんとぶつかり私は……捻挫をしたのだ。
ぶつかったときに頭も打ったらしく、私はその場で意識を手放してしまったがために殺人が起きたぁあ!なんて騒がれていたという話を主任から聞いたときは驚いたものだ。
殺人が起きた、なんて騒がれていたその後の事も教えてくれ、どうやら気絶した私を医務室まで運んでくださったのは主任だったらしい。
目が覚めたときには朝になっており医務室で一晩過ごしたのだがその場には主任もいて夜通しで私が起きるのを待っていてくれたらしい。
ご迷惑をお掛けしたことに申し訳なさを感じながら何度も謝り改めて翁さん達の話を聞いてただの捻挫だと知ると安心した。
あれで、もし骨折とかになっていたら役立たず看守だと言われていたことだろう。
そこまでひどいものでもないらしく一週間程度で治るとのことだが……痛いのだ。
なので、何もなしでは歩けず松葉杖を使っての移動でも良かったのだが距離があったので急遽、車椅子での移動となった。
ウノくんはその事を聞いて責任を取って嫁にもらうとか一生を捧げるとか土下座をしてまで謝ってくれたが私の不注意でもあったので丁重にお断りしておいた。
そんなことよりも、今は四舎で役に立つかどうかが問題だ。
十三舎のように好きなように歩き回ることはできないから本当に役立たずに思われたりしたら……え、どうしましょう。
役立たずと思われて、クビとかになったら……住む家がなくなります!!
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作者名:海月 | 作成日時:2021年10月10日 13時