情報学専門学校【アイビス】

何？ ページ6

ハイテンションな美香と別れ、一人で人気のない寂れた商店街を歩いていた。
夕方の、買い物客が増える時間だというのに、人っ子一人いない。

見渡す限りのシャッター。
これじゃ、ここがシャッター街と言われても仕方がない。
なんてのん気なことを考えていた。
さっき返ってきた数学のテストが平均点より低いことすら気にしない。
所詮テストなんて、ただの数字の羅列。
平均点に達していないイコールバカではない。

ああ、いつの間にか語っていた。
ここには、わたし一人しかいないのに。バカ丸出しだ。


商店街は結構長いので、歩いている途中でおなかがすく。
早く家に帰るか、途中で寄り道を――できる場所なんてないけど――寄り道をするか。
とりあえず帰ろう。

そう思って足を速めた。


その瞬間、視界を人影がかすめた。
「――？」
一瞬で、何かはわからなかったが、反射的に足を止めていた。
当然、誰かいたのか、周りを見て確認する。
「誰もいないじゃない」

寝つきが悪いから幻覚を見たんだ。
そうでなきゃ、誰もいないなんて訳がない。


「――本当にそう思う？」
「えっ？」
驚いて素っとん狂な声を上げていた。
「キミが思っている以上に、スキなんてそこら中にあるのさ」

一体何なんだ。
さっきまでは誰もいなかったし、何も言わなかったのに。
「キミは、目に見えるモノしか信用していない。それが真実という思い込みは危険なのさ。
現に今、キミは僕の姿を見ることはできないだろう？」
「あなたは誰なの！？」
わたしは大声で叫んでいた。「何が目的なの！？」
「目的は一つ。……ま、それをキミに言うつもりはないけど、ね」

怖い、と感じるよりもあっけにとられて立ちすくむ。
そんなわたしを見てか、
「ま、今回はこの辺でいいか。キミは、僕のことを忘れたいと望むだろう。しかしそれは、キミの、場合によっては世界を壊すことになる」

一方的に告げ、知らない声は聞こえなくなった。
一体何なんだ。
わたしが、何をしたというのだ――。


ふと下を見ると、そこには手帳が落ちていた。
「え、一グレード上の先輩？」
わたしのグレードは５。手帳に書かれていたグレードは、６だった。

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