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クラスメイトの視線を感じるけれど、私は怖がらずに彼らを見据える。
悪いことをして、非難されている訳では無い。
堂々とした私を見て、少しだけ首を縦に動かした子がいた。
あの子は……、確か、ヒサカ。

普段は静かで、暗い、無気力とよく言われる。
基本的に一人で、何を考えているのかわからない。
そんな日坂が、じっと私を見ていた。

ヒサカ、と声をかけよとしたが、当の日坂は目をそらし、自分の世界に入り込んでしまった。
まあいい。日坂にどう思われようと、胸を張っていればいい。


休み時間。
図書室に行くと、ほとんど人がいなく、閑散としていた。
いつだかテレビで見た、幽霊屋敷に少しだけ似ている。
叔父の本を読もうと思ったけれど、部屋に置いてきてしまったみたいだ。

だから、自分の尊敬している作家さんの本を読もうとして立ち上がりかけた。
すると、
「……あの、桐原紗月さん、ですか?」
弱々しく、教室の中では聞き取れないような声。
しかし、優しい響きを持つ声に驚きつつ、
「うん。あ、誰?」

問いかけると、さらにかしこまった口調で
「失礼しました。私は結城さくらです」
結城さん……あ、確かイラストレーター志望の子だ。
「結城さん、イラストレーターになりたいんだよね?」
「はい。でも、まだまだ未熟で」

恥ずかしそうに、でもどこか自信ありげな顔を見て
「ところで、何で私に声をかけたの?」
イラストを見てもらおうと思うのなら、もっと上手な人の方がいいと思う、という意味を込めて言った。
すると、
「紗月さんは、みんなに驚かれても、絶対に無理だろ、という目を向けられても堂々と胸を張って
いたからです。よかったら、将来の夢についてお話ししたいなと思いまして」

ああ、それなら納得できる。
他の人は、何だか『みんながそう言うなら僕/私も!』という感じ。
誰か一人の意見に、付和雷同しているように私も見えた。

結城さんを見て
「ねぇ、そのスケッチブックって、イラスト集みたいなもの?」
慌てて後ろに隠しながら頷く結城さん。見られたくないのかな。
「まだ、完成していないんです。でも、完成したら紗月さんに見てもらおうと思っています」
さっき慌てたのが嘘のように、堂々と言う結城さん。

三→←一



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うたは(プロフ) - 陰月。さん» わざわざ返信ありがとうございます。ううん、なんでしょう。私からすると多いなあという印象なのですが、陰月。さんが書いていて心地よいならこのままでも、と思います。指摘した身だというのに申し訳ございません。これからの御活躍お祈りしています。 (2019年2月17日 17時) (レス) id: 14b840c6a0 (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - うたはさん» 今更の返信すみません。やはり開業が多い方が読みやすいでしょうか?少し多めにしてみます。わざわざありがとうございます。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
うたは(プロフ) - はじめまして。このお話好きです。が、すみません、文の途中での改行が些か読みづらく感じました。これからも応援してます。頑張ってください。 (2019年1月20日 23時) (レス) id: 87a0c9cf89 (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - コノハ【心葉】さん» コメントありがとうございます<m(__)m>気づくのが遅くなってしまいすみません(-_-;)夢が小説家、とはっきりしていていいと思います。 (2018年12月29日 19時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
コノハ【心葉】 - 私の夢が小説家なので、なんか、元気付けられました。 (2018年11月14日 17時) (レス) id: bac5683ead (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:陰月。 | 作成日時:2018年3月22日 16時

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