気になるYGのあの娘 (ページ14)

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運がいいのか悪いのか、Aが指定した日時はスケジュールがフリーになっていた

メンバーもここぞとばかりに何処かへと出掛けて行く

浮き足立つ様子を一人で見送り、幸せな奴らだなと誰に聞かせるわけでもなく皮肉っぽいことを吐き出してみては、そろそろ行くか…と重い腰を上げた

場所はAが一度は行ってみたいと言っていた所で、高級ホテルのスイートルーム

いつか必ず…と約束していた場所だった

ホテルに到着し、足早にロビーを抜けるとエレベーターに一人乗り込み、一気に最上階まで上がっていく

胸は高鳴るけど、気持ちはどこか重苦しい

部屋の前まで着くと、一呼吸してからインターホンを押すと

その扉からは意味深な笑みを浮かべるAが出迎えてくれた

何日かぶり、いや一ヶ月以上…思わず腕のなかに閉じ込めてしまいたくなりそうに手を伸ばすけど、あっけなくするりと交わされてしまう

ちくっと痛み出す心、行き場をなくしたその手を虚しく元に戻し、ぎゅっと握ってみる

そんな俺を他所目にAは、どうぞと言わんばかりに俺の背中に手を添えてくるから、仕方なく部屋のなかへと足を進める

スイートルームというだけあってムダに広く、1泊すんのにいくらすんだよ…と余計な考えが頭を過ぎる

ここまでくるのに精神的に疲れ果てた身体をまずは休めようと迷わずソファーへ腰を沈める

なにをどこから話せばいいのか、なにを聞かされるのかそればかり気になって

何もこんなとこでと部屋に入ってからため息しか出てこない

『ねー、ユンギ…』

久しぶりに聞こえてくる声に痺れそうにもなる

『ねー、こっち来て見てみなよ。すっごい綺麗だから笑』

なんでそんなキラキラした目で、楽しそうに笑えるのか分からない

一面ガラス張りの窓に張り付くように外の景色を眺める余裕なんて俺にはないのに

なにか強い覚悟を決めて、既に心構えはできているかのように振る舞うAを見て

こんなときでさえ強くいなくてもいいのにと、そう思ってしまうんだ

それが自分のためにしていることなのか、もし、俺のためだというのならば…

できれば弱くいて欲しい

無理に笑わなくたっていい

平気な振りして隠れて泣くぐらいだったら

俺は喜んでAが望む通りにしてやれる

たとえ、それが別れだとしても…