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第五十九話 雷鳴に照らされた、闇 ページ10

真っ暗で何もない空間をひたすらさまよい続ける。

光など一切ない、どこを歩いているのかさえ把握できない。


(...これは、夢?)


ふわりと浮く身体。
ここはどこだろうと見渡しても、やはりあるのはどこまでも続く闇。


(...怖い)


得体の知れない恐怖感がAを襲う。
冷や汗と、喉から漏れる空気が喉を冷やした。


お願い、夢なら覚めて。





『っ...っ!?』


重たい瞼がゆっくりと開く。
見慣れた天井を認識して、深く息を吐く。
あれからどれくらい経ったのか。

首筋を流れる汗を拭い起き上がる。

真っ暗な夢だった。


ようやく目覚めたと思ったら、部屋の中も真っ暗で。

朦朧とした重い体に叱咤して、立ちあがり、部屋の電気を付けようとる。
だがいくら紐を引っ張っても明かりはつかない。

轟々とした雷雨に弾かれる窓をみて、停電の原因はそれかと納得した。

部屋の隅に置いてあった蝋燭もきれている。マッチさえもうない。





(...こわい)


これじゃまるで、あの夢の続きのようだ。
響く雷の音に肩を上下し、耳を塞ぐ。

力が抜け座り込んだ足を抱え、暗闇の中一人、涙を滲ませる。




(...タスケテ、こわい、しんすけ...、銀時っ)



銀髪の少年が心の中に現れる。
桜舞うなか、純真な笑顔をこちらに向けている。

胸が辛くて、息苦しくて。

会いたい、助けて、苦しい、怖い。

...大好き。




まるで水の中に沈められたように。
窒息してしまうほどの想いが、炎で焼かれ、私の中から消えていく。


残ったのは、光のない闇だけ。





(...どこにいるの、晋助)


気を失っている間居なくなってしまった彼。

縋る相手は彼しかいない。
私にはあの人しか、いないの。



着物を掴む力が強まる。
涙が止まらない、拭っても、溢れ出てくる。


銀時達は、もう私の事などどうでもよくなってしまったらしい。
彼らの中にはもう、私の存在はない。

いつまでも寺子屋時代の事を想っていたのは、私だけだった。


勝手に裏切られた気持ちになっている自分には、心底嫌気がさしてしまう。
こんな女、必要とされなくて...当然だった。



耳が痛くなるほどの雷の音にぎゅっと目を瞑る。


その時、強い突風が髪を散らばせた。
鍵のかかった扉、風が吹くのは可笑しなこと。


目を開けば、再度光った雷の光。
その一瞬の光に照らされた、男の姿。

第六十話 あの時と同じように 〜過去〜終→←第五十八話 鳥かごの華



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設定タグ:銀魂 , 坂田銀時 , 銀魂小説   
作品ジャンル:恋愛
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白桜姫 - 続き無いんでしょうか? (2018年11月16日 2時) (レス) id: d2ccbb161c (このIDを非表示/違反報告)
幸村時雨(プロフ) - 夏希さん» コメントありがとうございます!応援、とても励みになります^^更新頑張りますので、これからもよろしくお願い致します。 (2018年4月4日 22時) (レス) id: 7a07976017 (このIDを非表示/違反報告)
夏希 - 面白いです!頑張ってください!更新楽しみにしてます! (2018年4月2日 21時) (レス) id: 7d93fff421 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:幸村時雨 | 作成日時:2018年3月25日 1時

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