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「ごめん、責めてるわけじゃないんだよ」
ユナンは再び、いつもの柔らかい笑みを浮かべる。気付けば私の表情もひどく強張っていて、とりあえずこの空気をなんとかしたくて、コップの中のお茶を一気に飲んだ。
「……僕は『マギ』という立場とこの世界に、本当に嫌気が差しているんだ」
ごくん、と飲み干すのと同時に、ユナンは小さな声で話し始めた。───ユナンが自分の事を話すなんて、初めてだった。
「何度も何度も王を選び、仲間たちと共に国を築き、それでも……憎しみ、戦い、殺し合い、滅びて、繰り返す。何度だって、飽き足らず。
もう『王を選ぶ』なんてことしたくない、って、何回思ったかなんてことも忘れてしまった。
それでも僕は『マギ』なんだ。『マギ』っていう立場で、『王を選ぶ』っていう役目がある。
ひどく、悲しそうな笑い方だった。
私はユナンのことを何も知らなかった。『マギ』という立場で役目を果たし、その先に何を見てきたかなんて、今の私の知識と自我じゃ想像もできなかった。いや、以前の私でも同じだっただろう。
「……ごめん、変なことを言ったね。だけど聞いておきたかったんだ。
琥珀。君は、魔法を使って何をしたいんだい？」
その言葉が重く伸し掛かる。言葉の『重み』というものは、ここまで感じられるものだなんて知らなかった。
今の私に、明確に『したいこと』なんてあるはずがなかった。
記憶もなければ、したいことなんてあるはずがない。
今の私には、何もない───本当に？
『だから君も、沢山の人々と出会い、自分を見つけていけばいい』
声が甦る。
今の自分に、何もないなんて───それは、
「じ、自分を！」
勢い余って、空になったカップが机を転がった。倒れた椅子はがたんと音を立て、ユナンは心底びっくりしたように私を見上げていた。
「……自分を、知りたいんだ」
カタチにもなっていない単語をひとつずつ繋げ、なんとかユナンに伝えようと試みる。私がぐずぐずとしていても、ユナンは私のことを見つめて、言葉の続きを待ってくれていた。
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名無しさん(プロフ) - 藍茶さん» 藍茶さん初めまして、ご感想ありがとうございます！返信が遅くなってしまってすみません。この状況下なので私生活でも色々あったのですが、できるだけ更新ペースも元に戻していきたいとは思います。よろしくお願いします (2020年6月4日 16時) (
レス) id: 8c887b66b4 (このIDを非表示/違反報告)
藍茶(プロフ) - 最近読み始めました。めっちゃ面白いです！更新待ってます(*´ `*) (2020年5月10日 1時) (レス) id: cd49a05e5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名無しさん | 作成日時：2020年3月4日 21時
