〃 ページ23
ウオオオオと数秒前の自分を振り返って頭を抱えていると、ウーゴの吹き出す音が聞こえた。
「……笑うなよ」
「ごめんごめん、いや、うん……ありがとう」
それから巨人は私に向き直った。
その表情も瞳も先程の柔らかいものとは違い、まるで───『番人』を、思わせた。
「君には言っていなかったね。
ここは全知全能、万能の部屋。アラジンの願いをなんでもひとつだけ、叶えることができる」
彼の言葉は重々しい。思わず私も腰を上げ、ぼやける足をその地面に立たせた。
「けれど君ひとりを送り出す程度は容易い。
───君は、どうしたい」
「どうしたいって、だから、アラジンをここに残すのは嫌だって……」
「君がアラジンを想ってくれているのはよく分かる。けれど、アラジンのために、ここに残るっていうのは、少し違うと思うんだ。
……俺が勝手に君を作っておいて、あまりにも勝手だっていうのは分かってる。君は、君のしたいことをすべきだ」
すべきだって、だから、アラジンとここにいるのがやりたいことだって言ってるじゃないか。
そう言い返そうとしたのに、ウーゴはそれを最初から分かっていたみたいに口を挟んだ。
「それに君は、俺やアラジンのように肉体を持たない。君は何にも触れることもできずに、誰からも触れられることなく、ずっとここに残っていてもいいのかい？
友達のことを想うっていうのと、友達を中心に自分のことを決めるのは、多分、違うよ」
「──────」
それで、何も言い返せなくなった。
何にも触れられないし、誰からも触れられない。
アラジンとウーゴは、触れ合おうとすればできる。アラジンは自分の手で本を持って、指でページを捲ることもできる。
けれど私は、そのどれもできない。
触ろうとすれば透けてなくなってしまう。だから私は基本的にここでただぼうっとして過ごしていたし、アラジンを中心に生きていたようなものだ。
それに不満はなかった。抱く必要もなかった。他にすることもなかったし、選択肢を選ぶ余力もなかったから。
けれど───
「……今だから言うけどね。本当は、悪い子だったらどうしようって思ってた。このまま世界に送り出して大丈夫だろうかって。
でも、アラジンと過ごす君を見ていて、そしてさっき、君が言ってくれたことで。君は優しい子だって、よく分かったよ」
「優しい、なんて」
ぎり、と霊体の奥歯が軋む。
自分でもどうしてか、それを認められなかった。
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名無しさん(プロフ) - 藍茶さん» 藍茶さん初めまして、ご感想ありがとうございます！返信が遅くなってしまってすみません。この状況下なので私生活でも色々あったのですが、できるだけ更新ペースも元に戻していきたいとは思います。よろしくお願いします (2020年6月4日 16時) (
レス) id: 8c887b66b4 (このIDを非表示/違反報告)
藍茶(プロフ) - 最近読み始めました。めっちゃ面白いです！更新待ってます(*´ `*) (2020年5月10日 1時) (レス) id: cd49a05e5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名無しさん | 作成日時：2020年3月4日 21時
