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「人は、二回死にます。
 一度目は、肉体としての、物理的な死。
 二度目は、周りの人間から忘れ去られてしまう、記憶の死。
 順序が逆転することもありましょうが、基本的にこの二つを満たしてしまえば、その人間は『本当に死んだ』としていいでしょう。

 琥珀はアラジンの記憶も改竄することに成功しましたが、私となぎさはどうしてもできなかった。しなかった、とも言っていいでしょう。彼女を喪ってしまえば、私たちの起源もなくなってしまいますから。……なぎさ、自分の生い立ちと、琥珀のことを、昨夜彼に話したのでしょう」

「うっ……ご、ごめんなさい……」

「別に怒ってはいませんよ。まあ、説明の手間が省けました」

 の割に、梟は重々しく溜め息をついていた。早い段階から、なぎさがアラジンに話をするのをなんとなく分かっていたのだろう。

 だが要するに、この二人の記憶からはどうしても消せなかったと。
 なぎさの肉体は琥珀が造ったもので、クルトは肉体も精神も琥珀が造り上げた。元よりこの世界に存在すらしなかった彼らから『琥珀』を奪ってしまえば、何かしらの不条理が発するということだろう。

「ですがあなたは、一度喪った記憶を、断片とはいえ自身で取り戻した。それには何かの意味があると踏んでいましたが……やはり、そのブレスレットのようだ」

「……これが?」

 右手を持ち上げる。ちゃり、と音を鳴らして、嵌められた石は輝きを放っていた。

「はい。長らく持ち続けたモノには、意志が宿ると言われています。琥珀はその年数も桁違い(・・・)でしたから……あなたと琥珀を繋げる橋渡しでもしたのでしょう。
 琥珀はああ見えて、詰めが甘いですから。あなたにそれを渡さなければ、少なくともインキュベーターが全て死に絶えるまでは時間を稼げたでしょう」

 だが今回は、その琥珀の詰めの甘さというものが、道を開く鍵になったのも確かだ。それに、アラジンが無理矢理従わされるような展開にもならずに済んだ。

「とまあ、口上はこの程度でいいでしょう。
 私たちがあくまでもあなたに判断を委ねるのは───

 この一連の事象が、琥珀が偏にアラジンのことを想って起こした事だからです」

〃→←〃



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名無しさん(プロフ) - 藍茶さん» 藍茶さん初めまして、ご感想ありがとうございます!返信が遅くなってしまってすみません。この状況下なので私生活でも色々あったのですが、できるだけ更新ペースも元に戻していきたいとは思います。よろしくお願いします (2020年6月4日 16時) (レス) id: 8c887b66b4 (このIDを非表示/違反報告)
藍茶(プロフ) - 最近読み始めました。めっちゃ面白いです!更新待ってます(*´ `*) (2020年5月10日 1時) (レス) id: cd49a05e5e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:名無しさん | 作成日時:2020年3月4日 21時

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