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「結局さ、間違ってたのは全部私ってことだったんだ。
 ───心底自分が厭になるよ」

 数種類のポーチがついたままのベルトも机上に収める。琥珀は酷く軽くなった自らの腰を撫でた。
 いくつもの隠し持っていたナイフも全て外し、今彼女が身につけているものはソウルジェムの指輪と、二つの金属器───ブレスレットだけだ。愛用していた杖も短くして、カードケースと共に机に置いた。

「久し振りに、こんな軽装で外に行くよ。昔は、ほぼ杖しか持ってなかったんだけどね。……なんで、こうなっちゃったんだろう」

 虚ろな瞳で自分の掌を見つめる。それからかぶりを振ると、クルトへと向き直った。

回路(パス)のロックを外した。これで、おまえの中にある私のルフにもアクセスできる。もしも事実が知りたいなら……なぎさから聞かれたなら、いくらでもそこから見てくれ」

「……良いのですか?
 彼との記憶は、何よりもあなたが守りたかったものでは」

「まあ、確かにそうだな。でも、なぎさにも、勿論おまえにも、知る権利はあると思うんだ。私の都合で散々振り回したしさ。
 何、おまえが下手に口外するとは思えないし。もしおまえが覚えてくれてるんなら、なんか……それは、それで、いいかなっ、てさ。
 私は私で、ちゃんと全部思い出せた。これを抱えたまま……もう、行くよ」

 琥珀が言い切ると、クルトは苦しげに言葉を絞り出した。その直前の一瞬まで、まだ何かに迷っているようだった。

「……琥珀。私はあなたの使い魔です。あなたを止める権利も何もありません。
 ですが……あなたが破滅へと進んでいるのを、私は見てみぬふりをしていたも同然です。責められるべきは、本来は私なのではないでしょうか」

 自責の念に駆られる彼を見て、琥珀は小さく笑みを零した。
 彼がここまで自分の意見を出すのは初めてだったからだ。冗談交じりのことをさらっと口走ることはあっても、ここまでのものはなかった。

「そんなことないよ、おまえはよくできた使い魔だ。実際、おまえを作るときにちょっと失敗したのは私なんだからな。どっちかっていうと、やっぱおまえのほうが責める権利あるよ」

 はは、と笑みを漏らす。厭味でもなく、ただどこかで安心したようなもの。
 そうしてしばらく、二人の間には沈黙だけが漂っていた。
 気まずくはない。ただ───クルトが最後の最後まで後悔を抱いていたことを、琥珀は気付かなかった。

〃→←〃



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作者名:名無しさん | 作成日時:2019年11月3日 19時

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