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手の込んだ自 殺、と言われればそこまで。
 だけど、琥珀という人間はどこまでも自己嫌悪と自己陶酔を抱えた矛盾の塊だった。だが、いつも前者が勝っていた────ただ、それだけだ。

「……おい、消える前に教えろよ」

 琥珀の息が段々荒くなってくる。『ゴミ箱』を認識してしまった為だろう。それに『琥珀』はゆるりと振り向くと、返事のないまま続きを催促した。

「段々、(おまえ)の記憶が流れ込んで来た。私の『本能』ってのが、やらかしたことも……はは、こんなことまで忘れていたのか、私は……馬鹿、だなぁ」

 その場に座り込んだまま、鏡のような床に映った顔をただ見つめていた。自嘲的な笑みが張り付いて消えなかった。

「それでさ、私は、どうすればいいっていうんだよ……今から喉笛を、搔っ切ってもいいけどさ……それじゃ、多分、間に合わねえだろ」

 途切れ途切れの言葉が続けられる。琥珀の意識は混濁してきて、床に映る自分の顔すらぐにゃりと歪んだ。
 『琥珀』は何も答えない。ただ、琥珀の独白を聞き届けているだけのように見える。

「外で、どれくらいの時間が経ってるのか私には分からない……けどさ、もう何しても手遅れなんじゃねえのかな、ってくらいは、なんとなく、分かるよ……」

 酷く吐き気がして、思わず腹部に手を回す。息の荒い琥珀を見て、『琥珀』は目を細めたまま、軽い笑いを零した。

「……おまえなぁ」

「怒んなって、いや、やっぱり私自身だなって思っただけだ。
 安心しろ。今まで何の対抗策も練らなかったわけじゃない……ほら」

 琥珀の目の前に何かが放り投げられた。
 ばさ、と音を立てて広がったのは、一つの巻物。何かがびっしりと書き込まれたそれを持ち上げ、目を走らせる。

「────これ」

 その言葉は吐息と共に消えた。一瞬、目を通しただけでも理解できたから。
 そもそもこれは『琥珀』が書いたもの。自分自身が書いたものなら、わざわざ読む必要なんてなかったのだろう。琥珀の手が恐怖で震えるのを見て『琥珀』はまた鼻で笑う。

「『人類総抹殺』……ちょっと、いや、だいぶ無理矢理だけどさ。言い換えてみれば『この世界を書き換える』ってことだろ」

「……?」

 琥珀はその言葉の真意を汲み取れず、ぽかんと口を開けた。

第■■夜 方法→←第■■夜 自己嫌悪



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作者名:名無しさん | 作成日時:2019年11月3日 19時

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