検索窓
今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:13,145 hit

第■■夜 自己嫌悪 ページ18

「なぎさも」

「……ぇ」

「なぎさも、おまえのエゴの塊だろう」

 『琥珀』は追い打ちをかけるのを止めない。琥珀を追いつめるのは、自身を追いつめるのと同義。自分の首をゆっくりと締めていくようなものだ。

「大峡谷で彷徨っているのを見て、可哀想になったんだろう? おまえが作った人形(カラダ)に魂を定着させ、新たな生を享けさせた。あれをおまえのエゴと言わず、なんと言うんだ」

「……そ、れは」

「おまえの手で生を享けさせたのに、おまえは自らの手で殺そうとしていた。殺す気はなくても、やがて自我を失った頃にはなぎさを食うぞ」

 互いの怒鳴り声もどこかへ消え去り、今は二人共互いの荒い呼吸しか聞こえなかった。
 言い換えれば『琥珀』は、その文字通り自分を殺しにこの空間まで引き摺り下ろした。


 ───琥珀の想いに絶対的な善悪は存在しない。


 琥珀の中の、『伽藍堂』の『彼女』が悪。
 『ゴミ箱』に廃棄された『彼女』が善……決して、そうではない。

 だが最終的にどちらを是とし、どちらを非と判断するかは、他人……つまり家族や友人、仲間、神でもなく、琥珀本人だ。


 『ゴミ箱』に廃棄された『琥珀』は未来に待ち受ける事実に気付き、自分自身を殺してでも表の琥珀を止めると誓った。

 他の誰でもない、アラジンのために。


 ──アラジンのために世界を殺すと決めた琥珀。
 ──アラジンのために自分を殺すと決めた『琥珀』。



 二つの自我は互いに衝突し、永遠とも一瞬とも思えるような時の果てに、決着はついたようだ。


 どれほどの時間が経っただろうか。
 二人の『琥珀』は言葉も交わさぬまま、ただその場にいただけ。やがて『琥珀』はぽつりと言葉を零した。


「……私たち、互いが一番嫌いだもんな」


 今のはどちらの琥珀の言葉だっただろうか。
 琥珀は自嘲的な笑みを零し、溜め息と共に小さな声で吐き出した


「結局、一番自己中心的だったのは……私自身、だったってこと……」


 いや、最早区別は必要ないだろう。
 元々ひとつだったものが複数に別れることはできない。それはあってはならないことだ。そして琥珀はこの『ゴミ箱』が存在していたことに気付いた。近いうちにここは崩壊し、分断されていた自我と思考が再び一つに混ざり合い、自我は元通りになるだろう。

〃→←〃



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (16 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
58人がお気に入り
設定タグ:マギ , 夢小説 , トリップ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:名無しさん | 作成日時:2019年11月3日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。