magi 34-

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言いたいことを言っていくと、そのままぷんすこと怒りながら先へ歩いて行ってしまう。

　丸く欠けた月。二つの影が長く伸びて行く。
　アラジンは前方に伸びるそれをぼうっと眺めながら、そういえば、と思い出す。

　アリババに、「『マギ』だから」と言われたことは、一度だってなかった。
　いつだって、自分は誰かと同じだって。奴隷も罪人も皇族も関係ないと。
　本気で、心の底から、そう思っている。

　そうして、今やっと分かった。

　だからアリババは────

　誰よりも大きな、アラジンの『王の器』だったんだ。

◆

「僕も考えたよ、アリババくん。
　『聖宮』を壊すべきだと思う」

「ええ！？どういう理屈だよ？」

　一夜が明けて、日は昇りかけていた。驚くアリババの髪を風が揺らす。

「悪いのは誰かじゃなくて『聖宮』システムそのものだってことさ！『聖宮』がルフを管理するから、ルフが白と黒に分けられてしまう。『堕転』や黒いルフが悪いわけじゃないんだ」

「なるほどな」

　アリババはその言葉を噛み締めながら頷く。

「そして聖宮がある限り、誰かがルフの管理者であり続ける。それがシンドバッドおじさんでも、僕でもソロモン王でも、そしてウーゴくんでもダメなんだ。間違わずにいられる人間など、どこにもいないのだから」

「そうだな……」

　アラジンは少しだけ俯いて、それから顔を上げた。

「アリババくん。君は昨日、『自分のやりたいことを自分のように考えろ』って言ってくれただろ」

「え？ああ、言ったな」

「……琥珀さんのこと、今でも何も分からない。それでも、もう一度琥珀さんと話をしてみようと思う。力では敵わなくても、話には応じてくれる筈だ。
　それにうまくいけば、聖宮を壊した時点で琥珀さんの計画も頓挫するかもしれないしね。……あの手で、人々を殺させはしないさ。
　────見つけたよ。僕の、やりたいこと」

「……そうか！俺も、それがいいと思うぜ」

　はっきりと言ったその言葉を聞き届けたアリババは、どこか嬉しそうにも見えた。

　『聖宮』を壊せば、この世界は『暗黒大陸』のようになるだろう。
　『大いなる力』の影響が及ばない世界。ルフの管理者がいなくなれば、白と黒の差はなくなる。

　だが───それを望むのは、もうこの世界でアラジンとアリババだけだろう。