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〃 ページ10
案内された個室、ベッドの上で琥珀は死んだように眠っていた。
何も知らぬ人が見れば死んでいると思ってしまうだろう。
その顔には生気というものがなく、呼吸も浅い。近づいてみないと息をしているかどうかすらも分からない有様だ。
女官が部屋を出て行ってから、アラジンはベッド脇の椅子に腰掛ける。
「───琥珀さん。君は、僕のことを知っているのかい?」
囁くように言った。
勿論、返事はない。そもそも期待などもしていなかった。
あまりここに居座るのもいけないと思い、椅子から立ち上がる。
最後に体温の感じられない冷たい肌に手を触れてから、部屋を後にした。
扉の音を聞いてから、琥珀は目を醒ます。
たった今、タイミング良く/悪く眠りから醒めたというものではない。
彼女は、元から眠ってなどいなかった。
確かに、医務室に運ばれた時は間違いなく眠りに落ちていた。それがアラジンが医務室を尋ねた頃に目を醒まし、彼が部屋に入って来ても寝たふりをしていただけだ。
表情ひとつ変えず、彼女は呟いた。
「────ごめんなさい」
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作者名:名無しさん | 作成日時:2019年8月4日 23時