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真面目にそんな事を言い出すものだから、ユナンは小さく吹き出してしまった。
「なっ!? 笑い事ではないのですよ、琥珀とおまえがふ、ふふ、
くく、と笑いながら、ユナンは目尻に溜まった涙を指で拭った。
「ううん、ごめんね、何を聞かれるかと思ったものだから……うん。今ので、君と琥珀の関係は良いものだって分かったよ」
唐突にそんなことを言われ、なぎさの怒りも鎮火してしまった。……正直に言ってしまうと、アラジンも内心動悸が収まらなかったのだが。
それからユナンは一つ息をついて、懐かしそうに目を細めた。
「……今からどれくらい前になるだろう。十年と、少しくらいかな。
僕は暫くの間、
不思議な言い方だった。それに疑問を覚えたアラジンは、率直に聞く。
「生をうけたばかりって、生まれたばかりのときってことかい?」
少し間を置いて、ユナンは笑って、その答えを口にはしなかった。
「それは言えない。少なくとも僕の口からは。……いつか、琥珀のほうから話してくれるのを待ってくれるかい? これは、僕からのお願いだ」
「……分かったよ」
アラジンが渋々ながらもそう頷くと、ユナンは微笑んで「ありがとう」と呟いた。
「琥珀は目を醒ますなり、まだ満足に動かせない体を起こして、開口一番『外に出る』なんて言ったんだ。僕にはなんだか、生き急いでるように見えた。
勿論そんな無茶はさせられない。手も足も、言ってしまえば赤子のほうが動かせるだろう。それでも外に出るって言って聞かないものだから……仕方がなく、魔法で体を無理に動かさないようにしたりね」
懐かしんで、少し笑った。長い時を生きている彼にとっても、ずっとずっと遠い出来事のように話していた。
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作者名:名無しさん | 作成日時:2019年8月4日 23時