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「なぎさ。琥珀はどこに行ったか分かるかい？ 見当たらないのだけど」
「……琥珀なら、一番先に出て行って……もう部屋に戻ったのだと思います。その、体の具合が、少し、優れないとかで」
「体調が……？」
彼女にしては珍しい、とジャーファルは何か引っ掛かった。なぎさの表情を見るに、彼女も何か腑に落ちないようだ。そして逆に、なぎさはジャーファルへと質問をする。
「───ジャーファルは琥珀をどう思いますか」
「えっ！？」
あまりに予想外、そして唐突すぎる質問に驚く。この少女は一体何を言い出すのだ。そして何か既視感があるようなこのやり取り。だがなぎさの質問の真意はそうではなかった。
「最近の琥珀は何かおかしいのです。絶対に、おかしいのです。……ジャーファルからは、琥珀がどう見えるのか、なぎさは知りたいのです」
「ど、どうって……というか、なぜ私に聞くんだい？ アラジンやモルジアナ、アリババ君なんかには……」
「───なぎさから見て一番まともな『大人』がジャーファルだからです。それ以上もそれ以下もないのです」
先程とは打って変わって、あまりにも冷めた目でジャーファルを見つめた。彼女の心が全く読み取れないことに不安を抱きながらも、ジャーファルの中ではこの少女を心配させてはいけないという母性のようなもののほうが大きく働く。
「ま、まあ、なぎさはあまり心配しないでください。あとで私が琥珀の様子を見てきますから。……きっと、気のせいですよ」
なんて気休めを言いながら、なぎさの頭を撫でる。
───自分の口から出た言葉が、こんなに信用ならないものであるのは、彼にとって初めてだった。
◇
じ、と自分を見る黒い瞳。
気圧されて、なぎさは少し後ずさった。
「……な、なんで、しょうか」
「いや。なんでもない。けど……トト、おまえ、少し気になる」
ちなみに、なぎさとトトの身長差は50cm前後といったところ。なぎさからしてみれば、琥珀(約167cm)以上に背の高い、見知らぬ女性にいきなりガン見されるというのに恐怖を覚えるのは仕方がない。
「お、おおお、おまえがなぎさに興味があったとしても、なぎさは、おまえに微塵も興味はないのです……」
「そんなこと言うな！ おまえもアリババの友人だろう！ 話をするだけだ！」
「な、なんで追っかけてくるのですか！？ へ、へるぷ、琥珀────っ！！」
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作者名：名無しさん | 作成日時：2019年8月4日 23時
