第205夜 王の器とは? ページ28
◇
バン、と勢いよく開かれる扉。力任せに押し開けられ、部屋ごと振動したように思えた。そしてそのままシンドバッドは苛立った足取りでユナンとアラジンに歩み寄る。
「俺も話に混ぜろ、ユナン」
「やだよ。僕はアラジンと二人で話すんだ」
アラジンを背にして、ふるふると首を振る様は子供のようにも見える。
そのやりとりを見て、アラジンは尚更この二人の関係性が分からなくなってきていた。
一年程前、シンドバッドはユナンについて、
『奴こそがこの時代に『第一の迷宮』を出現させた『マギ』だ。それを攻略したのがこの俺だ』
と言っていた。
だが実際はどうだ。シンドバッドはユナンの胸倉を掴んで怒鳴り散らし、当の本人ユナンは先程と変わらず首を横に振り続けている。
そしてユナンを引き剥がし、空中へと避難するアラジン。シンドバッドは一層落ち着きをなくし、指をさして地上から喚いた。
「そいつから離れろアラジン!」
「落ち着いておくれよ、シンドバッドおじさん!」
「そうだよシンドバッドおじさん!」
「うるせえっ!」
この期に及んでまだユナンは軽口を叩く余裕があるらしい。
「そいつはジュダルと同罪だ、『迷宮』を出しまくって世界を混乱させている張本人なんだぞ!」
「ひどい、シンドバッド! 僕は『迷宮』を引っ込めた数の方が多いのに! ジュダルが煌帝国びいきで出した『迷宮』をしまって回ったのは僕なんだよ? それなのに……」
その上、嘘泣きで本当に数粒の涙まで流す演技力も兼ね備えているときた。そしてそのまま外へと飛んで行ってしまう。
「バカッ、シンドバッドのバカッ。もう知らない!」
「待てコラァ!」
怒号を後にして、杖に腰掛けたまま優雅に空中を浮遊する。
「アラジンと二人で話せる場所なら、自分で作ればいいだけだよ。
───『
魔力を感じさせない、つるの絡まった長い木の枝───不思議だが、アラジンはどこかでそれを見たような気がした───をユナンは軽く振る。
空中から、何かきらきらとしたものが杖の先に集まった。なんだろう、とアラジンが思った矢先、それは大きな一本の木へと姿を変えた。
何もない場所から木が出てきた。それ以外にどう形容すればいいのかは分からない。
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作者名:名無しさん | 作成日時:2019年8月4日 23時