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「ここってすてきだね、暗くて……シンドリアの日差しってきつすぎるよね」
「ユナンお兄さん、びっくりするじゃないか。どうして突然、ここへ来たんだい?」
アラジンはユナンのぼやきには反応せず、魔導書に目を落としている彼に率直に質問した。
「それはもちろん。アラジン、君に会うためさ。マグノシュタットではあまり話もできなかったからね」
「そうだね。ユナンお兄さん、あの時すぐに消えちゃうんだもの。大変だったんだよ。煌帝国へ紅炎おじさんたちが帰ってくれるまで、みんなピリピリしてて」
「大丈夫。もはや国家規模ではない、共通の的の存在を知った以上……あの場であれ以上殺し合うつもりは両陣営のボス同士になかった。
だから、君ひとりであんまり気に病まないで。今すぐには戦いは起きない。大丈夫だよ、アラジン」
草花のような微笑みは、どうやっても『創世の魔法使い』には見えない。王を導いてその隣に立つ、というよりは、争いを避けて茶を飲む姿のほうが似合うだろう。
「モルさんの言ってた通りだね。
おにいさんのこと、色々聞いたんだ。不思議な雰囲気だけど、とてもやさしい、いいお兄さんだってモルさん言ってた。他にも『眷属器』の特訓に付き合ってくれたり、モルさんが勉強したいって言ったら、トラン語をくわしく教えてくれたって」
「……ふふ。モルジアナが喜んでくれたならよかった。でも───僕、そんなにいいお兄さんじゃないよ?」
「えっ?」
「───『ウーゴくん』のこと……僕もよーく知ってるよ」
先程の微笑みとは違う種別の笑み。何か底知れぬものを抱えたようなものだった。
「ウーゴくんだって!?」
「うん。あの『聖宮の番人』のごひいきの『マギ』は、残念だけど君だけじゃないんだよ」
アラジンの言う『がんじょうな部屋』。それを知っているということは、もしやアラジンよりも前にあそこにいたというのだろうか。
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作者名:名無しさん | 作成日時:2019年8月4日 23時