〃 ページ23
「……ねえ■■■■■■さん」
くるりと振り返る。紫色の髪が散った床には、先程と変わらず、切り離された胴体と首が転がっていた。
「■■■■■■さん、いつか『築いたものを守ろうとする時、人は武器を手に取り、そしてどんなことでもする』って言ってましたよね。それで私『どんなことでもする』って大口叩いたんですよね。確かにあれは、何の覚悟も力も中身もない言葉だったかもしれない。
でも私、今なら本当に
世界の超基本的法則も変えられる。時間さえ掛ければ、聖宮に無傷でアクセスさえも……
───だって、
……はは、あははははははっ！」
空っぽの部屋に響き渡る、嬰児の鳴き声を、聞いていた。
◇
夢を見ていた。
内容はよく覚えていないが、あまり居心地の良くないものだったということだけは覚えている。
視界は明るい。日はもうだいぶ高いところまで昇っていたらしい。
なんとなく腕をあげようと思ったが、思うように動かない。きっとここ数日、ずっと横になっていたせいだろう。そうに違いない。
そのとき、ドアが空いた。
部屋に入ってきた若い声の女性は何か私に話しかけると、落ち込んだような表情をして黙りこくった。
よく聞こえない上に、よく見えない。彼に近い水色の淡い髪をしているというのは分かるのだが、その顔も話していることも分からない。何故だろう。分からない。
二回目のドアが開く音。
入って来たのは目の醒めるような青い髪で、視界はクリアになった。
「あ、おはよう、琥珀さん！ 起きたんだね。ご飯、持ってきたよ！」
耳にすんなりと入ってくる声に安心感を覚える。それから彼は部屋にいた水色の髪の女性と少し話す。
何故だか分からないが、女性は少し落ち込んだような雰囲気のまま私に軽く手を振ると、部屋を出て行った。そもそも彼女はどうしてこの部屋に来たのだろう。それもよく分からないが、彼女の機嫌が治ると良い。なんとなくそう思った。
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作者名：名無しさん | 作成日時：2019年8月4日 23時
