magi 21

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第201.5夜【幕間】嬰児ページ22

◆

　夢を見る。

『───ごめんなさい、■■■■■■さん。■■■■■■さんだけが悪いって言いたいんじゃないんです。
　でも。でも、世界の未来がどうとか、そんな、難しいこと……私には、分かりません。判断できません』

　あの人に楯突き、今にも泣きそうなあの弱い顔を見る。
　どこまでも脆弱で、馬鹿で、醜いことか。自分の物差しで測れないほど強い彼の前で、子鹿のように震える足を抑えて噛み付いた。

『最初に会ったときも言いましたよね。私、馬鹿で恐がりで、頭が悪いんですよ。……だから、百年後とか千年語とか、私の知りもしない未来に生きる人たちの為に、私は死にたくないっ！みんな(・・・)だって……し、死なせて、たまるものかっ！』

『……こんなところまで侵入して、言いにきたのはそれだけか』

　杖を構えて叫んだ少女を、彼は呆れたように溜め息で一蹴した。
　まあ当たり前の反応だろう。あんなもの、ただ子犬が足下で吠えているのと変わらない。実力の伴わない意見なんて、説得力の欠片すらないのだから。

　アラジンやアリババたちのように何かを成し遂げたこともなく、一人では何をすることもできない。ずっと誰かの後ろに隠れて、戦いに怯えて尻尾を丸めていただけの小動物。それが今更キャンキャンと吠えたところで誰が相手にしよう。だから────

　殺した。

　血を吹き出して転がる体。
　首と同時にばらけた髪は、真っ赤な池にふわりと落ちた。

「───みんな(・・・)か」

　驚いてこちらを見るあいつの顔も気に食わないので、とりあえず首を斬っておいた。

「みんな(・・・)を、せかい(・・・)を守るとか、随分甘ったれた事を言ってたよなあ」

　さっきの所に戻って、自分の頭を蹴飛ばす。音もしないで、質量のない首はゴム毬のように転がって行った。

「全てを守る、全てが欲しい……なんて目的、嬰児と何が違う。あれもこれも全部欲しいなんて、お前は生まれたばかりの赤ん坊か？力もないくせに意見だけは一丁前だな」

　首を踏みつける度にその造形は歪んで、目も当てられない惨状になる。中身はからっぽだというのに、ぐちゃぐちゃと血だけが吹き出していた。