第190夜 炎の共闘 ページ4
「まさか本気でやる気か、『黒いジン』を一万匹！？」
アリババが惚けているのを尻目に、紅炎は次々と黒いジンに突進していく。数体を黒ルフに還すごとに──もはや火山と化した──溶岩の流れ出る地面へ飛び込む。
紅炎が編み出した、魔力消耗などで戦闘不能に陥らないための秘策といえるだろう。足りないものは足せばいいという精神で、消費した魔力を溶岩で補填し続け、連戦を行う。アラジンはそれがどれほど危険な行為か分かっていた。
「無茶だよ！ そんなの何度も何度も死にかけるのと同じだ、おじさんの体が辛いはずだよ！ 止めなきゃ！」
「聞き入れては下さらぬでしょう。自分が傷付くことなど厭わない。そのようなお方なのですよ、兄上は」
思えば、あの時もそうだった。
紅覇の折れた腕に留まらず、自軍の負傷者を一手に担った。今も自分の事など二の次のように、黒いジンに立ち向かっている。
「……皆のために……世界を守るためなら、傷付いても構わない……そんな人なのか」
「いえ、全くそんな意味ではなく」
「いや、全くそんな意味じゃないぞ」
アリババが尊敬の意を込めて呟いた言葉に、氷のように感動を冷ます言葉が浴びせられた。黙々と黒いジンを屠り続けていた琥珀もいつの間にか紅炎を観戦し、紅明と揃って言い放ったのだ。
「兄王様の、あの興奮しきった顔は……」
黒いジンの目玉を弾けさせ、その体を爆発させ、残った残骸まで燃やし尽くす。見る人が見れば、この光景を『悪魔だ』と背筋を凍らせるだろう。
「どいつも、こいつも、おまえもおまえも、邪魔だ！ 俺の邪魔をする奴は死ねっ！！
おまえたちはなんだ？ 俺に真実を差し出せるのか？ ん！？ おまえたちを片付ければ、俺はついに欲しかったものを手に入れることができる！
────物言わぬ愚図は死ねッッ！
とっとと俺に、あの『マギ』と語らせろ！！」
ぞわ、とアラジンの背が粟立つ。自分はあんな人間に、一体何時間問い詰められてしまうのか。あまりにも怖すぎる。
「炎兄はちゃんと国のことを考えてる人だけど、公私を別にすれば知識欲の人だから、今はもうアラジンと話すことしか頭にないよ〜気に入られちゃったねぇ」
「ヒィィ！ こわい！」
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作者名：名無しさん | 作成日時：2019年7月9日 0時
