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「───あ、あいつ、マグノシュタットをぶんどる気だ！！」
我慢ならず、紅覇は力任せに叫ぶ。白瑛も感情を露わにすることこそなかったが、シンドバッドのことは本能的に気に入らなかった。
「紅炎殿……まさかあの男、ここまで計算して機を窺っていたのでは？」
さらに、ムーはシンドバッドがシェヘラザードにあらかじめ書簡を送り続けていたことを知っている。奴はまさかこの時を予期していたのではないか。
あまりにも用意周到すぎるそのやり口に、様々な方向から不信感が募る。
紅炎の返事自体では、ここで大戦が繰り広げられるのもあり得るだろう。
彼は────
「では俺は、この『マギ』を頂く」
「「……えっ！？」」
まるで物扱いするかのようにアラジンを小脇に抱え、そんなことを言い放ったのだ。他の面々やアラジン自身も、まさか紅炎がそんな暴挙に出るとは思わなかった。その上、
「約束したもんなっ」
「……う、うん」
などと、全く笑えていない笑顔でそう
「あの者が領土や地位を望むだけの男ならば、ここで息の根を止めるのもいい。……だが、そうではないはずだ」
「えっ？」
白瑛は紅炎の言っていることがいまいちよく分かっていないようだった。
一方、当のシンドバッドも一本取られたという風に笑っていた。
「存外、扱いづらい男だ」
◇
「今宵は祝杯をあげましょう」
玉艶は心底嬉しそうにそう言った。周りの覆面の男たちも、賛同して頷く。
「シェヘラザードが死んだレームの盤石は揺らぎます。そして今回、マグノシュタットの『依り代』が役に立たなかったとはいえ……一回空いた『世界の穴』は数年間はふさがりません。
すなわち、私たちは新たな『暗黒点』を仕上げれば、すぐにでも『我らが父』をお招きできる。今度は小競り合う暇もなくね」
「しかし玉艶様、ソロモン王は傲慢なのです。一時代に三人まで『聖宮』の力で『マギ』を生み出せる。我々煌帝国を牽制するため、再びレームの地に『マギ』のルフを落とす可能性は高い。
それどころか……シェヘラザードの自我そのものを新たな『マギ』の器に入れるかも。無防備な赤子では再び我々に奪われると踏んで。そうやって膨大な知識と卓越した自我を保っている『マギ』は既に存在する。あの『ユナン』です」
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作者名：名無しさん | 作成日時：2019年7月9日 0時
