magi 20

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第197夜伝言ページ23

「おい見ろよ、姉さんがいるぜ白龍。いいのかよ、駆け寄らなくて」

　ジュダルの揶揄にも白龍は反応せず、目線も合わせぬまま抑揚のない声で言った。

「そんなことをするために、ここまで来たのではないでしょう」

「……ああ、そうだったな」

◆

『魔導士こそが世界を正しく導ける！より優れた種族が、そうでないものたちを管理せねばならんのだ！』

　かたかた、かたかたとスライドショーのように映像が切り替わる。終わることのない紙芝居を見せられているようでもあった。

「私は……なぜ、誰よりも正しく生きられるなどと考えたのだろう。
　結局は、私の憎しみに駆られた決断で、沢山の魔導士も、そうでない人間たちも死に追いやってしまった」

　今更後悔しても遅すぎるのは、モガメットが一番分かっていた。それでも悔やむ声は、壊れたラジオのように留まるところを知らない。

「私は、『非魔導士(ゴイ)』たちに望み続けていたのだ……身勝手にも、醜い感情を何も持たない非力な、『魔導士に助けられるべき存在』としてあり続けることを。
　彼らとの間に壁を作り続けていたのは、私のほうであった」

　アラジンは唇を噛み、泣き出しそうになるのを堪え、震える声を押さえつけて小さく言った。

「あのね、学長先生。
　戦争の前の日に、ひどいことを言ってごめんなさい」

　───『学長先生は、魔導士だけの王様にふさわしい！』

「そうじゃなかったよ。マグノシュタットでは、今もたくさんの人たちがみんな学長先生の教えを支えにがんばっているんだ。
　だから戻って来て、みんなに伝えておくれよ。これkらのマグノシュタットのことを……他の誰かじゃ、だめなんだ。
　そのためにティトスくんが命がげで、今も引き留めてくれているんだろう！？」

　アラジンの呼びかけを、モガメットは静かに否定する。

「それは、できない」

「なぜ？」

　聞き返して、やっと気付く。
　モガメットの背後には、何かおぞましいものが巣食っていた。
　顔は潰れ、もはや人であるかどうかすら分からない。それが何十、何百とモガメットを責め続けていた。