magi 20

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「な、なんだって急に、そんな奴の迷いで『依り代』が止まるんだよ？」

　アリババが訳も分からず問い質すのを、ユナンは遥か上空を指差して告げた。

「ごらん。あの一粒の白い光のおかげさ」

　覆面の男たちもそれを感じ取る。
　なぜあんな不純物(・・・)が、『依り代』に混ざっているのだ？

「白いルフだ。堕転した黒いルフだけで作られるべきはずの『依り代』の中に、堕転していない真っ白な人物の白いルフがある。彼が、戦いで弱ってきた『依り代』を押し留めているんだ。誰かは分からないどね……」

「……僕には分かるよ。行ってくる」

「どこへ！？」

　突如踵を返して歩き出すアラジンをアリババが引き止める。アラジンは足を止めぬまま、静かに帰した。

「あの中へ、学長先生のルフに会いに。彼を引き戻す。そして、それだけじゃないんだ。
　学長先生の迷いは『マグノシュタット(このくに)』の迷いそのものだ。あの人はマグノシュタットの指針そのものだった。それを失ってみんな迷ってる。どう決着をつけるかに、この国の人たちすべて未来がかかってるんだ！だから……」

「アラジンくん」

　その腕をヤムライハが掴む。彼女らしくもなく、力の強い手と縋るような瞳だった。

「私も連れて行って……！」

「可能なら頼む。マタル・モガメットはヤムライハの養父だ」

　シンドバッドからもそう言われ、アラジンは二つ返事で了承する。

「いくよヤムさん！」

　瞬間、ルフが暴れ出す。
　魔導士でない者たちの目にもはっきり見えるまでにルフの濃度が増していた。信じられない光景に、さすがの紅炎も目を見開く。

「───『ソロモンの知恵』！！」

◆

　真黒な世界に放り出される。ヤムライハは訳も分からずといった感じだが、アラジンは慣れた様子で立っていた。

「ここは……？」

「学長先生のルフの中だよ。でも、それだけじゃないみたい」

　ある空間に目を向ける。そこだけ、かろうじて保っているように、白く明かりが灯っていた。
　中央に座るのはモガメット。その目は虚ろで、一体どこを見ているのか定かではない。

　ここは彼のルフの中だ。それなのに、彼以外のルフが混じっていた。

『───恨む』

『───恨むぞ』

　ぐちゃぐちゃに塗り潰された顔で人々は怨嗟の声を吐きかける。