magi 20

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第196夜迷いページ20

『依り代』が四散する。
　１３人もの『金属器』使いが一斉に極大魔法を撃ったのだ。それだけでなく、眷属たちも最大出力で出し尽くした。やっと倒せた、というよりは、これで倒せなくてたまるか、といった気持ちのほうが人々を占めていた。

「いや、これは……」

　ユナンが呟く。
　『依り代』はまだ生きていた。
　黒ルフより供給される無限の魔力で瞬時にして体を修復し、その足は確かにまだ立っていた。
　再び、耳を劈くような叫び声。それを聞き届け、玉艶は高笑いを響かせた。

「及びませんねぇ！『アルマトラン』の時に７２人がかりだったものを、たったの１３人で、倒せるはずがないじゃない！」

「───くそ！」

　ムーは自分の拳が切れるのも厭わず、怒りに任せて地面を殴りつけた。

「シェヘラザード様の最後の魔力も届かんというのかっ！」

「……さ、最後の……？」

　アラジンが聞き返す。

「俺やおまえたちが再び極大魔法を撃てたのはあのお方の恩恵だ。そのせいで、今はもう……」

　その先こそ言わなかったが、アラジンは一瞬にして理解した。
　いや、シェヘラザードが死んだというのならば、彼は────

「ティトスくん、ティトスくんは！？」

　苦い顔をして、ムーはふるふると首を振った。

「死んだよ、とっくに……」

「────そんな……」

◇

「───ラジン、アラジン！」

　呆けていたアラジンの意識を、モルジアナが呼び覚ます。

「『依り代』の様子が変です！」

　モルジアナの指差す先へ視線を向ける。
　『依り代』は空の『なにか』からも手を離し、その動きを止めていた。頭部のあるであろう部分を抱え、もがき苦しんでいるようにも見える。ユナンはそれを見上げ、穏やかな口調で話す。

「それは、『依り代』が迷っているせいだ。正確には『依り代』の『核』になった人物のルフがね。『黒いジン』を作り出し操るには、誰か一人、堕転した人間の強い意志が必要だったはずだからね。
　マグノシュタット魔力炉を司るほどの人物に心当たりは？アラジン」

　ユナンに問われるまでもなく、アラジンは分かっていた。

「それは、きっと学長先生……」

　それを理解したのはアラジンだけではない。モガメットと古い付き合いの魔導士たちも、あれがモガメットそのものであることを感じ取っていた。