magi 20

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「おいユナン、久々に現れたと思ったら……モルジアナにどんな余計な入れ知恵したんだ？」

　バアルの太い尾でユナンの帽子をずり上げながら問い質す。

「わあ、その尻尾すてきだね！
　余計じゃないよ、シンドバッド。僕は彼女に、むやみに炎を放出する以外の『眷属器』の使い方を教えただけ。炎を鎖の周囲にずっと留めるんだ。熱で気流を操って飛ぶこともできる。
　そして、同時に鎖の形状も操れば、今や彼女は燃え盛る、大きな大きな『両足(ぶき)』を手に入れたということだよ」

「『眷属器』───『炎翼鉄鎖(アモール・セルセイラ)』！！」

　鎖でできた大鳥は炎を纏い、モルジアナの脚力も乗算されたその嘴を『依り代』の防壁に叩き付ける。
　玉艶は余裕そうに笑っていた。ルフから魔力を奪い、ここまで肥大化した『依り代』の防壁が破られるはずはないと───だが。

「───何！？」

　新たに乱入した『七海連合』の金属器使いと眷属たち。その猛攻に、防壁は亀裂を走らせた。

「『不侵略不可侵略(しんりゃくせずしんりゃくさせず)』が『七海連合』の信念だ。レームや煌、マグノシュタット……国家同士、宣戦布告を果たした上での戦に無闇に介入する機はない。しかし、俺たちの世界(・・・・・・)への招かれざる客なら……
　────排除する。たとえどんなに崇高な、『神』たる存在であってもだ！」

　『依り代』自体の抵抗する力も弱まり、防壁を傷つけることもできた。それでも破壊するには至らない。何か決定的な突破力がなければ、この防壁が再び完全な状態に戻るのも時間の問題だ。

「っ……誰だ！？」

　脆い硝子細工のように砕け散る防壁。アリババは天を切り裂く軌道の主を目で追いかける。

「シェヘラザード様……あなたの『転送魔法陣』で、負傷兵の帰還と、本国からの『援軍』の召還を完了しました……！」

「ム、ムーさん！と、誰だ……！？」

　人馬を連想させる銀の鎧に身を包んだムーの後ろには、海神のような出で立ちの男も一人。レームの金属器使い、イグナティウス・アレキウスだ。……さらにその後ろ、気球の中にはジン『シャックス』を従えたネルヴァ・ユリウス・カルアデスもいるのだが、悲しいかな彼はまだ『魔装』を習得できないでいた。