第189夜 一万匹 ページ1
「────はあぁぁあぁっ！！」
紅覇と紅玉の叫び声が重なる。
虫のように次から次へと湧いて出る『黒いジン』を、一匹一匹屠っていく。二人とも『魔装』の
力は協力で、一撃にしてジンの胴体に風穴を開けた。────が。
ジンは黒い鳥へと自主的に解体し、黒い球体へと還って行く。斬撃では粉々にしないと、とどめが刺せない。このままではジンを攻撃する度に黒ルフへと還り、いたちごっこの繰り返しだ。
……琥珀の放った『ネコ』ならば黒ルフごと補食できるのだが、それでも『依り代』が生み出すスピードの方が何倍も速かった。
「──『
そこへ紅明が躍り出る。そのしなやかな指で空中に方陣を描く。無防備な彼をジンは踏みつぶそうとするが、それは敵わなかった。
ジンの足は紅明の足下にいた、別のジンへとお見舞いされた。紅明のジン『ダンダリオン』は物質を転送させる能力の持ち主という訳だ。
「やれやれ疲れる。私の『ジン』はあまり戦闘向きではないんですよ」
紅明の手早い転送によって、黒いジンたちは自分の意志に関わらず潰し合いをさせられる。確かに、これによって魔力の無駄な消費はなくなるだろう。
だが、これではきりがない。湧いて出る虫を一匹一匹潰して回るのではなく、
『依り代』へと突っ込んで行くアリババ。その前には幾重もの黒いジンたち。それを一直線に裂くように、白瑛が背後から援護する。
「風で道を！ こじ開けろ、パイモンッ！」
「おらあぁぁッ！！」
金属器さえ叩き斬る『アモン』でも、破れぬ
どうやらあの『依り代』は『防壁』を張っているようだった。
『依り代』は、幾万人もの生命から得た莫大な魔力と黒いルフの結晶体。傷つけることすら叶わない。
そして無数の『黒いジン』を生み出し続ける────たった六人の、ソロモンの『金属器』使いの魔力は儚いものだ。
「こいつら無限に出てくるじゃん！ どうするアラジン！？」
「いや、無限じゃないと思うよ！」
背中合わせになった紅覇とアラジンは互いに叫ぶ。もう折れて使い物にならなくなった枝を捨て、アラジンは首に下げていたウーゴの笛を手にした。
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作者名：名無しさん | 作成日時：2019年7月9日 0時
