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第**夜 友人または友達 ページ20






 『1』のような文字が描かれたメダルと時間割の書かれた紙、加えて支給された制服を手にしながら琥珀は長い廊下を歩く。
 『入国審査』も『編入試験』も難なく(?)突破し、奇妙きてれつな街の中を通り、琥珀はマグノシュタット学院へ足を踏み入れた。ちなみに今年度第四期らしい。思っていたよりも早く編入を済ませられた喜びをなんとか隠しつつも足を進める。

 人も物も飛んでいるのが当たり前。国中至る所に魔法道具が散らばっており、むしろどこを見ても必ず視界に魔法道具が入る、という有様だ。ベベもそれをリュックの隙間から覗き見、驚きを隠せないでいた。

「『マレーフ(上級魔導士による魔法指導)は明日から、編入生諸君は学園寮にて体を休めること』……あ、部屋ここか」

 気がつけば自分に割り当てられた部屋の前まで来ていた琥珀は、遠慮もなしに思い切りドアを開け放つ。

「き、きゃあっ!?」

 それに驚いて先客は小さな悲鳴を上げた。その鳥がさえずったような声を聞き届け、琥珀は軽く謝罪を口にする。

「……ごめん、誰もいないかと思ってた」

 琥珀に背を向けベッドに座っていた少女は恐る恐る振り向く。
 十六、七ほどの少女だった。長い前髪、二つに分けられた三つ編み、そして分厚い眼鏡。The・文学少女というようなその出で立ちに琥珀はほんの少し呆気に取られる。

「ううん、大丈夫。私のほうこそ、その、大きな声出しちゃって、ごめんなさい」

 少女は先程よりは落ち着いたようだった。栗色のくるくるとした癖毛がふわりと揺れている。琥珀は大きな声ではなかったな、と思いながらもその髪を綿菓子のようだと思いながら眺めていた。彼女は自分(の髪)を見つめてくる琥珀を不思議そうに見返してから名乗り始める。

「えっと、その。わた、私はゲルダ。一緒の部屋……ってこと、よね? ……よろしく、ね」

 ほんの少し震えている、白い右手が差し出された。琥珀は一瞬迷った末、その手を握り、

「────琥珀。よろしく」

 自分から手を差し出してきたくせに、まさか握手に応じられるとは思ってもみなかったらしく、彼女は感動したように琥珀の手を両手で包み込むとぶんぶんと上下に激しく振り始めた。その大きな瞳には涙が溜まっている。ころころと変わる彼女の態度に琥珀はおっかなびっくりしながらも、されるがままになっていた。

〃→←〃



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名無しさん(プロフ) - 恋葉さん» ボードのほうに書き込ませて頂きました。ご確認をお願い致します。 (2019年12月7日 1時) (レス) id: 8c887b66b4 (このIDを非表示/違反報告)
恋葉(プロフ) - こちらこそ、返信が遅くなってしまい、すみません…。 そこまでで大丈夫です!箇条書きで私以外の人も見ることができるのなら是非、箇条書きでお願いしたいです。私はこの作品を作る作者様が本当に素晴らしいと思います。この話をいつまでも応援させていただきますね! (2019年12月6日 13時) (レス) id: 18327d4b2f (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - →箇条書きなどで簡潔に纏める程度、そして恋葉さんのボードに書き込む形でもよろしければ、是非書かせて頂ければと思います。 (2019年12月4日 18時) (レス) id: 8c887b66b4 (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - →ここまでの話というのは15.5まででよろしいでしょうか? 後日、夢主がこうなった経緯の何から何までを作中のキャラクターに説明させる予定なので、あまり細かい描写はお約束できませんが…→ (2019年12月4日 18時) (レス) id: 8c887b66b4 (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - 恋葉さん» 恋葉さん、はじめまして。コメントありがとうございます。それから、返信がとても遅くなってしまい申し訳ありません。 理解力が長けていないなんて、そのようなことはありません。自分でもすごく分かりづらい話を書いているなあと毎日思っています。→ (2019年12月4日 18時) (レス) id: 8c887b66b4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:名無しさん | 作成日時:2019年3月11日 18時

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