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だが、今この国はそんな華やかなものではなかった。
港に下り立ち、アリババたちは目を見開く。
青い空の下で人々は声をこらえて涙を流し、そこから見えるだけでも家屋という家屋が荒らされていた。跡形もなくなってしまったものもあり、女性や子供がその側で立ち尽くしている。奥のほうではまだ黒い煙が上がっていた。
「ひ、ひでぇ、めちゃくちゃだ」
「おかしい、アクティアの港は協力な国の海軍に護られているはずじゃ、なぜこんなことに!?」
アリババたちは勿論、船長もここまでの被害だとは思っていなかったらしい。
そこへ、二人の槍兵を携え赤いマントを身につけた男がやってきた。恐らく海軍の中でも高い地位の人間だろう。
「『
我々はアクティア海軍だ。あなた方は、先程のシンドリア商船の方々ですね?」
再び口に出されたその名前。アラジンが『大聖母』とは一体なんなのかを尋ねれば、男は丁寧に教えてくれた。
「西方の海賊だよ。『魔法道具』を駆使して略奪を行う凶暴な奴らだ」
船長もそれは分かっていた。だが、まだ疑問が残っている。
「しかし、なぜこんな海域に? 警護の固いアクティアの海に海賊などはびこるはずがないでしょう?」
「その通り。しかし、近年は北の国境へ兵を送らねばならぬ故、海は手薄にならざるを得ないのです。」
「北の国境?」
「ええ。
マグノシュタットの、防衛戦線です」
アラジンの顔には驚愕の表情が滲み出た。
これから自分が行く国が、このアクティアへ戦争を仕掛けている。アリババもその話を聞いてアラジンを心配するように見ていた。
「ムスタシム王権崩壊後、周辺諸国に踏み込んで来るようになって……あそこは、もはや何をしでかすかわからない不気味な国です」
そこで、先程まで静かだった辺りがざわつき始めた。男と二人の兵は「またか」と苦い顔で溜め息をつく。
見れば、ぼろぼろの服を着た人々がこちらへ向かってきていた。
「私の子供を助けて!」
「海賊たちから子供を取り返してくれよ!」
泣きながら兵に縋り付いている。兵たちはいいえ、ともはい、とも言い切ることができない。彼らも疲弊した表情で宥めるだけだった。
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名無しさん(プロフ) - みぞれ@絵描き同盟さん» ありがとうございます慈悲をありがとうございます 次の説明欄にて書かせて頂きます!!!! (2019年1月15日 16時) (レス) id: 8c887b66b4 (このIDを非表示/違反報告)
みぞれ@絵描き同盟(プロフ) - そろそろ14巻に突入なので質問コーナーに出没してみようかと えっと、琥珀姉さんの設定において企画段階と現在で 何か変更した点はありますか? (2019年1月15日 11時) (レス) id: 9020e988e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無しさん | 作成日時:2019年1月3日 0時