第119夜 別離 ページ1
黒い煙が空へ上がって行く。
パチパチという音を聞きながら、アラジンたちは目の前の炎を見つめていた。
シンドリア付近の小さな島で、ドゥニヤの葬儀が行われた。
アラジンやヤムライハ、王宮の侍医たちの尽力空しく、ドゥニヤは原因不明のまま衰弱し死亡した。
「おい、遺体を見たか?」
ひそひそと話す兵達の声が聞こえる。
「ああ、なんだありゃあ、まるで……
────干からびた、黒炭のようだった」
アリババはそれを一度見た事があった。
「カシム……!」
ジャーファルは一度、闇の金属器の後遺症かドゥニヤは日に日に衰弱していると言っていた。
間違いなく原因はそれだろう。
花を手にして燃え盛る火の前に立つ。
「……なあ、アラジン。『闇の金属器』って、なんだったんだろうな」
「それも調べに行くよ。この人の、故郷へ」
アラジンたちに続き、ヤムライハや王宮の人々も花を火に投げ入れて行く。
なぎさは訳も分からないまま火を前に一人立っていた。
パチパチという音を背に、琥珀は足で砂を弄ぶ。
出てきたやどかりに少し驚いて足を引っ込めた。
琥珀は花を一輪だけ投げ入れた後、別れを惜しむこともなく早々に人だかりから抜けていた。
ジャーファルはヤムライハと共に花を投げた後、その一人ぼっちの背を見つける。
「琥珀」
「……ジャーファル」
彼がいることに少し驚いたような顔をする。元々来る予定ではなかったからだ。
ジャーファルは琥珀の近くに行こうとして足を進める。砂浜を悠々と歩くやどかりを踏みそうになって、慌てて足を引っ込めた。
「なんだよ、お前来てたのか」
「悪いですか?」
「べっつにぃ」
いつもより少し声をひそめて言葉を交わす。再び琥珀が足で砂を掻き回し始めたのと同時に、ジャーファルは口を開いた。
「なぜ、王女が衰弱していくのを放っておいたのです」
琥珀はジャーファルの顔も見ず、足を動かしたまま答えた。
「放っておいた、って人聞きが悪いな。アラジンとヤムライハ、それに王宮の医者たちも総出でなんとかしようとしてただろ」
「……琥珀、あなたなら王女を助けられたのでは」
「無理だね。アラジンにできなくて私ができる筈がない。まあ頑張って多少の延命はできようが、いずれ近いうちに死ぬものだよ。あれは」
ジャーファルは顔をしかめる。琥珀を疑っているということではなく、ただ純粋に彼には分からなかったからだ。
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名無しさん(プロフ) - みぞれ@絵描き同盟さん» ありがとうございます慈悲をありがとうございます 次の説明欄にて書かせて頂きます!!!! (2019年1月15日 16時) (レス) id: 8c887b66b4 (このIDを非表示/違反報告)
みぞれ@絵描き同盟(プロフ) - そろそろ14巻に突入なので質問コーナーに出没してみようかと えっと、琥珀姉さんの設定において企画段階と現在で 何か変更した点はありますか? (2019年1月15日 11時) (レス) id: 9020e988e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無しさん | 作成日時:2019年1月3日 0時