黒い車から逃げて白い車に轢かれたら【降谷零/安室透】

24 ページ24

もう希望なんて無い
こう何日経っても見つけてくれない組織より、この人の方がずっと怖い




安「では、行ってらっしゃい」

「.......はい」





車から車椅子に降ろしてもらって、その操縦をバトンタッチされたのは学校の先生


無謀にも逃亡を企ててから数日
それを激しく後悔しながらまだちゃんと寝れた事が無い


仕事に行くと言って夜通し安室さんが帰って来なかった日ですら

玄関前で私が約束を破るか見張ってるんじゃないか、
眠って隙を見せた瞬間に殺されるんじゃないか

安心出来る要素が無い以前に、恐怖を煽る事ばかり想像し続ける



.....ちなみにお風呂については、滑りやすい風呂場で四肢の半分が使えないと転倒のリスクが高過ぎるから

そんな理に適った理由で必要最低限の手伝いだけ着衣のまましてくれてる

服の脱ぎ着、
風呂場椅子への移動とその逆、
背中、
全身の洗い残し

それ以外の時は扉のすぐ外で待ってくれてるみたい


何度も言うけど恥ずかしさなんて微塵も感じない
そこにはただ恐怖だけ

感謝するべきなのは理性で理解してる
事故の直後病院に運んでくれたのも安室さんで、ご飯を恵んでくれて、唯一のベッドも譲ってくれてる
殺さなきゃいけないはずの私の介護をしてくれてる
分かってはいるの

でも感情はどこまでも恐怖だけ





蘭「あ、Aちゃんおはよう！」

「お、おはよ.......！」





先生に運んでもらった先の教室で真っ先に声をかけてくれる蘭ちゃん

理由は知らないけど、この人たちと仲良くならなきゃいけないから
どんなに疲れてても普通を装えるように


大丈夫
組織に関わり始めてからずっとそうして来たじゃん

初めて会ったおじさんに毒を飲ませた次の日に友達とプリ撮ったじゃん

出来る
出来るから





・




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ドライヤーで髪を乾かしてあげた後も、何も喋らず俯きがちにじっと動かない少女

学校はどうだったか、友達とはうまく行っているか等と雑談を試みようとしても





安「デザートでもどうですか？」

「.......はい」




としか言わない

ついに何かに気付いたらしいベルモットから呼び出しを貰っているが、それでも冷蔵庫から自分は食べないアイスクリームを取り出して





安「明日、リハビリの後に少し買い物に行きませんか？」

「......はい」

安「では欲しい物を考えておいて下さい。食器はそのままで大丈夫です。何かあればすぐに連絡を」

「.......はい」

25→←23

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す