黒い車から逃げて白い車に轢かれたら【降谷零/安室透】

13 犬のように従順に ページ13

ハ「アン！アン！」

安「ただいま、いい子にしてたかい？」

ハ「アン！！」

安「すみません、ソファが無いのでベッドでもいいですか？椅子や床じゃ辛いですよね？」

「.......は、はい......」





こんなにもドキドキするお姫様抱っこは初めて

もちろん良い意味じゃない
どんな動きもコントロール下に置かれる窮屈さ
突然息の根を止められるかもしれない緊迫感

残念ながらここのアパートにエレベーターが無くて車椅子じゃどうしようもできないから、みたいな事言われて
どこかの地下駐車場からここまで.......





安「下ろしますよ」

「っ........」

ハ「クゥン......？」




座るような形で降ろされたのは床から大して高くないシーツの上
すぐに白い子犬が寄って来た代わりに、パッと




安「その人はAさん、しばらくここで一緒に住むから優しくしてあげるんだぞ」




あの人によって点けられた部屋の明かり

それにしても本当に犬なんて飼ってるんだ.......
車の中でされた話を疑ってたというより、あんな恐ろしい人がペットを飼ってるなんて想像付かなくて




ハ「ハッ、ハッ！」

安「名前はハロです。どうぞ撫でてあげるなり抱っこしてあげるなり、自由にして下さい」

「..........」





......自由に

自由なんてあるの？






・





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本当に.......効果があって思惑通りだと喜ぶべきか
可哀想だと同情するべきか

普段より手短な散歩から帰って来ても、片手でも食べやすいようにマグカップに入れて渡しておいたポタージュが綺麗に無くなっているだけで




「......た、食べました......」




目を合わそうとしない視線とうずくまる姿勢は、散歩へ出た時から狂い無く変わっていない

動くなとは言っていないんだがな.......





安「ではこれからの話をしましょう。大丈夫ですか？疲れているなら明日でも構いませんが」

「......大丈夫です、聞きます」





その返事を聞いて、素早く洗面所からハサミと適当な新聞紙を手に





「.......っ.......？」

安「転校を機に、まずはイメチェンしちゃいましょうか」





これも多少の時間稼ぎにはなるはず




「あ、あなたが.......切るんですか......？」

安「組織が知っているままの姿で散髪に行くのはリスクがありますからね」

「..........」

14→←12

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す