共犯者に恋をしてはいけません【安室透/降谷零】

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降「決めたか？何がしたいか」

「...ほ、本当にどこでもいいの？」

降「せめて車で行ける範囲内にしてくれ」



シートベルトの締め方すら自信が無さそうな少女
あの毛利蘭や鈴木園子と同い年だというのに、可哀想と言えば陳腐過ぎるがそれ以外に言葉が見当たらない

1ヶ月ほど前のある晩
偶然夜中のコンビニで見かけた万引き現場
服装は丈の短いスカートに古いピンヒール、無理矢理強調したような胸元の開いたシャツ
随分と若そうな顔には似合わない化粧に、最初は新宿にありふれてそうな不良かと思っていた

だが、引っかかったのはその万引きした中身
どこぞの探偵坊主が言いそうな事だが、ビールとチョコ菓子を一緒に買う人間はそうそういない
そういう趣味か、もしくは...と考えた時に見えたのが首の後ろの古いアザ

やけに嫌そうに万引きする様子も最悪な予測をより確実にしていくばかりで
お人好しだと思われるだろうか
そのビールを届ける先が安全なのか気になり始めたら声をかけずにはいられなかった


そして案の定な風見からの調査報告
愛するこの国で、こんな身近に壮絶な思いをしている少女がいる事
事実として彼女以外にも多くの人間がそのような苦しい環境にあるという社会現状は知っているが、肉眼で見た物は衝撃の度合いが違う

誕生日くらい、誰にでも幸せになる権利がある

万引きという犯罪を庇い
どこかの汚らわしい男に好きなようにされるよりかはマシな誕生日を送らせる

俺に出来るのもこれくらい



「じゃあ...原宿...？」

降「原宿？」

「...行った事なくて...む、無理ならいいけど」



原宿ならすぐそこだろ
しかもその歳なら...と考えかけてやめる

...その歳だから行けないのか
時代の最先端を行ってそうな若い女がいつでも群がっている場所
そんな同年代の女達に混じるのが...



降「いや、原宿か。俺も初めてかもしれないな」

「...気遣ってくれなくていいから」

降「可愛くないな」

「...だからキモいって」



この一晩だけなんだ
少しでも心を開いて、存分に楽しんで欲しい

太陽が顔を出せば、俺は安室透として喫茶店のバイトに出かける




　



　

と思っていたんだが

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