共犯者に恋をしてはいけません【安室透/降谷零】

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「...ここまで来て水なの」

降「飲んだら帰れなくなるだろ、飲酒運転は厳禁だぞ」

「...あっそう」



目の前では髪で顔を隠すように俯く少女
クラブで見つけたという報告が入った時は驚いたが、それには理由があるのだろうと余計なことは疑わないようにした
あまり強引に問い詰めたところで良い事など一つも無い

とりあえずはゆっくり何か食べさせて、落ち着いて来たら少しずつ訳を聞こうと



「...あの人、怒らないであげていいよ。別に殴られたりした訳じゃないし。私が大声出して叫んだりしたのも本当だから」

降「悪いとは言わないが強がるのは程々にしておけ」

「.....」

降「俺もお前をどうこうしようとは考えてない、そろそろ気を許してくれてもいいんじゃないか？」



焼き鳥に伸ばそうともしない手はテーブルに隠れ恐らく膝の上
続けて運ばれて来たのはきゅうりの漬物



降「食べてみろ、酒のつまみには持って来いだぞ。胃の中にまだ少しくらいクラブで飲んだものが残ってるだろ」

「...あんた真面目が取り柄じゃなかったの」

降「真面目に言ってるんだ」



別に酒を飲ませたいわけじゃない
もちろん飲んでいたと知った時は嫌な気がした
だがそれを咎めても仕方ないだろ
何より大事なのは、その原因にアプローチをする事であって、決して闇雲に叱ることじゃない
ましてや親でも教師でもない俺がすることでは絶対に無い

...一体何がこの少女をクラブやアルコールに惹き付けたのか
あれ程"悩みがあれば話してくれ"と言っていた上に同年代の良い友達もいるというのに、何故何も話さなかったのか

風見に言わせれば"そういった場所に居るのが好きなだけの不良少女だから"だろうが、俺はきっとこの子には正当な考えがあったからだと信じて疑わなかった

あんなに良い子なんだ
勉強もかなり頑張っている
家事も十分こなせている
彼氏と別れた事に起因があるんだろう
酷いフラれ方をされたのかもしれない
もしくは純粋に酷い事をされたのかもしれない
それで傷付いて自暴自棄に



「...違うよ、あの男子は関係無い」

降「...じゃあ何が

「別に、....」



とまた黙り込んでしまった様子に、相当重い悩みがあるのは把握出来たが



「...っていうか、いちいち家来ないで。プライベートの侵害なんだけど。もう帰っていい？あんたも私に構ってないでさ、他にやるべき事あるでしょ」



少しでもその意味を察してあげられていたら苦労しなかったんだろうな

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