共犯者に恋をしてはいけません【安室透/降谷零】

24 ページ24

父「A、知ってるか？テレビの前のケチャップのシミ」

「.....」

父「あのシミができた日ってのはな、お前のママが勝手にサツん所に行ったんだよ。可哀想に相手にされなかったらしくてな、俺が相手にしてやったら血流しやがって」

降「娘を脅して何になる」



横目で見る斜め後ろでは膝を抱えるように座り込んで肩を震わす姿

...酷過ぎる
同じ人間だと認めたくもない

母親の担当をした巡査も何を考えていたのか
手元の調査資料によると、当時今のあの少女のような状態で町交番へ行ったらしい
身体の傷を見せて訴えるも、それが記録される事すらなく
同じ警察組織の一員として恥ずかしいどころじゃない



降「家庭内暴力の証拠はある。逮捕状くらいすぐに出せる」

父「なあ若いの、あんたもサツでガキに手を出したなんてまずいんじゃないのか？」

降「余計なお世話だ」



聞こえて来るすすり泣く声
それに胸が痛むが、新しい人生を歩むならどうしても乗り越えてもらわなければいけない壁



父「Aの事ならあんたの好きにさせてやる、チクったりもしねー、ここはお互い旨い酒でも飲もーじゃねーか」

降「断る」



何をどう言っても血の繋がった父親ではある
その恐怖政治により生活の中心になっていた存在
その為に身体を汚し、万引きもして、今も精神を支配されているような関係

それを断ち切りたいのなら、本人が自ら決断をしなければならない

高校に進学もせず、世間からも白い目で見られるかもしれない少女
だが、俺は信じたい



父「ならいいのか？日本の警察、未成年とヤっちゃったなんてネットに書いても」



あれだけ言ったのに
警察手帳に例の2万円を挟んで返して来たような少女なんだ



父「そしたら間違いなくお前の人生終わるだろうな？」



都合の良い事だけ飲み込むような柔な人間じゃない
だから、きっと



父「明日ニュース番組で記者会見でも開く事になるぞ。...あ、もしかして生でヤっちゃっ

「もうやめてよ！！」

父「っ...は？」

「私はお父さんの人形じゃない！！もう戻らない！！」



ガラスには透けるように反射した拙く銃口を向けた姿

気持ちの悪い言い方だが、

酷く気に入った



「二度と私の前に現れないで！！二度と名前を呼ばないで！！お父さんなんか...お父さんなんか...いなくなっちゃえばいいの！！」



カチっとセーフティが作動した音
その美しいまでもある決意



降「それがお前の望みか？」



どんな手を尽くしてでも叶えよう

25→←23

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す