共犯者に恋をしてはいけません【安室透/降谷零】

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降「いいんじゃないか？似合ってると思うぞ」

「...別に聞いてない」



また戻って来たWEG◯の店内
私自身とはかけ離れた清楚系ワンピースから覗くのは、まだ消毒液の匂いがする腕や足

鏡に映る自分を見て、不恰好ではあるけどずっとこのままでいれたらなって思っ



「っ、ちょっと何！」

降「もうすぐ夏になる、帽子もあった方がいいだろ」



上から押すように被せられた"帽子らしい"物を上げて視界を確保する
目の前の鏡で見えたのは黒いキャップ



降「麦わら帽子も可愛いと思うが、そういうシンプルな物の方が使いやすい」

「...だから聞いてないってば」



背後では何故か楽しそうな青い目

やっぱり分からない
悪い人じゃないとして、じゃあ誰なの？
何で私とこんな事してるの？

『あの2万は正真正銘お前が頑張って稼いだ金だ。使いたいなら使えばいい。使いたくなければ使わなくてもいい。それはお前自身が決める事であって、父親にとやかく言われるべきじゃない。
それで今日はお前の誕生日だ。欲しい物があってその金を使いたくないのなら俺がプレゼントとして贈る。遠慮はするな、それだけ約束してくれ。いいな？』

なんて、どういうつもりで言ったのか
ただの善人？
本気で私に同情してくれてる？
分かんない



降「足のサイズは分かるか？」

「...いいよ、靴ならいっぱいあ

降「約束、忘れてないだろうな？」

「っ...23とか24くらい...」




刻一刻と更けていく夜
あんなに輝いていたネオンが減ってくにつれて、増えてく荷物

新しい財布の中の住民は二人の福沢諭吉
新しい腕時計が指すのはもうすぐ頂点
小さい頃聞いた童話で、ガラスの靴を履いたプリンセスの話があるけど
こんな気持ちだったのかな

今日が終わる
誕生日が終わる
このある意味ワンナイトな時間も終わる

あの大きいわたあめも食べれた
サ◯ゼでイタリアンも行けた
コーラってお酒より安いのにずっと美味しいって知れた

丁度今財布に増えた中身は人生初のプリクラ
"流石に無理だ"って言った金髪を"私も一人じゃ無理"って連れ込んで
アナウンスと共に切られていったシャッターに、こんなに楽しい世界があるんだって勇気をもらえた

だから、お礼にあの2万円を返す
それ以上の夜をくれたから釣り合わないかもしれないけど
このお金の使い方は私次第なんだし
もう帰って仮にお父さんに殺されてもいいと



降「笑ってくれて良かった、その方が似合ってるぞ」



...思いたかった代わりに

ドキっ、て

え？

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