共犯者に恋をしてはいけません【安室透/降谷零】

12 ページ12

「っ...ぅ...」

降「ついて、っ...」



口角を拭ってやろうと伸ばした紙ナプキンを避けるように窓際に肩を寄せた17になったばかりの少女


さすがに無いとは思うが万が一店の物を盗ろうとしたら、
もしくは誰かとトラブルにでもなったら、
護衛じゃないが見守るくらいのつもりで着いて行った竹下通り散策

が、この少女は見るだけ見て何も買わずに足取り重く先に進んで行った
2万じゃ足りなかったのか？
それとも何か理由があるのか？
そう考えていた時に並んでいたのがあのクレープ店


助手席で俯く少女は、しばらく手元の甘い根源を見つめて食べようともしなかった
きっと自分なりの葛藤があるんだろう
何か言って邪魔をするよりは、ただ静かに安心できる空間を作ってやろうと、俺もあまりそちらを見過ぎずにこれからの事を考えた

たった500円もしないクレープ
女ならこぞって買って写真を撮りたがるスイーツ
2万も持っておきながら購入を諦め、こうして買い与えても口にするまでかなりの躊躇を要し、

大事そうに少しずつ少しずつかじり始めてすぐ
"美味しい"と呟きながら流し始めたのは涙だった

クレープ一つで涙するくらいの少女
一体どれだけの苦痛を背負ってるんだと
本当にこのままこの一晩を終わらせていいのかと
そんな迷いと共に膨れ上がるのが、父親への憤怒

...どうする
俺は、この国の安全と秩序を守る警官
だが万引きをもみ消し、行為に及んでいないとは言え赤の他人である未成年少女にその目的の金銭をも渡した
...既に充分な犯罪を



「聞いたよね...？...何があったかって...」

降「あ、あぁ...話したくなければ別に

「私が稼いだお金は全部お父さんの物なの」



若干震えた声
手元には未だ食べかけのクレープ



「前に二人の相手して4万稼いだ後気持ち悪くなっちゃって、道端の自販機でお茶買ったんだけど、帰ったら"なんで4万ぴったり無いんだ"って怒られて...これ、その時のタバコの跡」



そう言って、長い髪を片方に寄せて見せられたのは首の後ろの...古いアザじゃ...なかったのか

震え出したは自分自身の手



「...それから勝手にお金使うの怖くて...でも今日誕生日だから...もしかしたら少しくらい...って...思って...ごめん、こんな話クレープのお礼にならないね。次の"マッサージ"タダにしてあげるから」

降「...ちょっと

「ありがとね、クレープ美味しかった。これ食べかけだけど最後は手でちぎって食べたから、残りはあんたに

降「ちょっと待て！」

13→←11

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す