共犯者に恋をしてはいけません【安室透/降谷零】

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"お酒、アルコールは大人になってから！"

そんな表示がされたコンビニの一角の前で、チラチラと見渡して確認するのは店員が爆睡してる事
店内では最近流行りのK-POPが流れながら、成人向け雑誌コーナーの向こう側は真夜中の住宅街

慣れた手つきで冷蔵庫の扉を開けると、私は缶ビールを二つボロボロのトートバッグに入れた
先に入れていたチョコ菓子の割れた音と共に


こんなの、私だってしたくなかった
まだ16歳
今年で17歳
中学の頃知り合いだった子は皆キラキラしたJKになってるのに

私は男を誘惑することにしか脳が無いような格好で夜中に万引き

もう泣けもしない

中学3年の時にお母さんが消えた
今もどこかで生きてるとは思うけど、ある日突然帰って来なくなった
お父さんのDVのせいで

最初はお母さんも私を守ろうとしてくれてたけど、小学校を卒業したあたりからもう限界が近かったのかな
私に八つ当たりするようになった

仕方ないと思ってたよ
夫に毎日暴言暴力振るわれたら、そりゃ捌け口も欲しくなる
だから恨んでなんかない

お父さんは何がしたいのか分からない
仕事もしないで、毎日家で飲んでは寝て
中卒になってしまった私に、"頭が無いなら身体で稼げよ"って

この歳だからキャバクラはどこも雇ってくれなかった
それで、そういう目的の出会い系サイトに登録して、惨めで痛い思いをしてやっと貰えるのは2万円くらい
しかもそのまま全額お父さんに取られては、酒やタバコに消えて行く

でも月に一度のアレが来ると、その2万円ですら稼げない
それなのに家に酒が無いと、私に増えて行くのはお金じゃなくて青いアザだけ

そんなの嫌だから
だから
万引き

どうせ盗むなら自分へのご褒美も一緒にと思って入れたチョコ
こんな汚れた私でも女の子なの
パフェとか、クレープとか、いつか食べてみたい


いらっしゃいませ、とも
ありがとうございました、とも言わない爆睡アルバイトをドキドキしながら通り過ぎて
開いた自動ドアを抜ける

この先私はどうするんだろう
どうなるんだろう
お先真っ暗、未来なんか見えない
街中で恋愛映画の予告を見かけては、見たいだなんて高望みはせずに自分でその先を妄想する
こんな事があったらいいなって、考えるくらいは自由で



降「おい」

「っ！」



え
嘘
まさか万引きが

と振り返った先は



降「...未成年か？」

「...あ、え、い、イングリッシュ、ノー！ワカンナイ！」



金髪に青い目の外国人だった

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