黒猫は幸せを届けたい (ページ10)

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10個目ページ10

ショッピさんにちょっかいを掛けられつつもお刺身を食べきり、毛繕いも終わってやることが無くなった。
探検しようと思っても、脚の怪我のせいで鬱先生がストップを掛けるから、自由に探検すら出来ないのだ。ぶっちゃけると暇でしかない。
無駄にゴロゴロと転がってジャケットを毛だらけにしてみたが、それも直ぐに飽きてしまった。……寝るかぁ。
『んなぁーう(おやすみさなーい)』

ジャケットをちょいっと弄っていい感じの巣にして、その真ん中のベストポジションで丸くなると、別に眠くなかった筈なのに、意識が刈り取られたかのように眠りに落ちてしまった。

syp｢あーあ、寝てもうた。構ったろう思ってたのに｣

｢おちびちゃん寝たん？ならそっとしといたってや。
……そう言えばショッピ君、こんくらいの猫ってまだ親と一緒に居る時期やんな？｣
拾ってからずっと思っていた疑問を、丁度いいタイミングやから猫好きの後輩に質問する。
予想としては親とはぐれて迷って衰弱なんやけど、飯を行儀よう食うてたし、人に慣れ過ぎとるからある程度まで飼われとったけど捨てられた、のどっちかよなぁと有り得そうな事を考えてみる。

syp｢まぁ。大体の猫はこんぐらいちっこいと、親と一緒に居る時期っスね。なんでまぁ、捨てられたンやと思いますよ｣

近くに親っぽいの見掛けませんでした？
と聞いてくるショッピの声をBGMに、おちびちゃんを見付けた時のことを振り返るが、特にそれっぽい影も形も見覚えがない。

｢なんや大先生、こんな時間に飯か？｣

思考の海に沈んでいると、突然背中をバシバシ叩かれた痛みで意識が浮上する。

｢ちょ、シャオちゃん痛い痛い！叩かんでや！｣

sya｢そんな力入れてへんって！んで、その毛玉どうしたん、飼うん？｣

コロコロと話題が転がるからテンション高なっとるんやろうなぁ。ちょこちょこ擦り傷とかあるし、模擬戦かなんかやってアドレナリンどばどば分泌してるんかも。シバかれた背中まだ痛いわ……

｢まぁ、一応そのつもりでは居るんやけど、おちびちゃんが親とはぐれたんやったら戻したらななぁって｣
親が居て欲しいと願う自分と、このままうちの子になってしまえと願う自分を抑えて
ジャケットの真ん中で眠る子猫をそっと撫でた。