第2章 図書室の君 ページ6
10月。木枯らしが吹きすさび、ホグワーツ城の南方に位置する湖の水温が氷さながらに冷たくなった頃、Aはようやく学校生活に慣れて来た。
ここホグワーツ魔法魔術学校はイギリスにある男女共学の全寮制で、朝昼晩すべての生活を校内で賄うことのできる巨大な古城だった。校内は荘厳で、広大で、まるで古《いにしえ》の貴族が住む王城のように煌びやかだった。
Aは、入学当初まるで自分がお姫様になったような、映画や絵本の世界に紛れ込んだかのような夢心地だったが、実の所はそんな可愛いものではなかった。
例えば、和やかに朝食を食べているとき、不意に半透明のゴーストがヒューッと飛んで来て悪戯まがいに身体をすり抜けて行ったり、またあるときは、暗がりの廊下に佇む騎士の格好をした鎧がすれ違いざま突然ガチャガチャと動いて話しかけて来たりするので、Aは毎日身の竦む思いをしながら過ごさなければいけなかったのだ。
また、日本で”普通に”生きて来たAには到底考えられないことだったが、ホグワーツには(と言うより魔法界には)いわゆる電化製品というものが存在しなかった。何もわざわざ電気仕掛けの機械に頼らなくとも、魔法使い達にしてみれば杖を一振りさえすれば魔法で補えるからだ。
それに、ホグワーツでは敷地内に施された強力な魔法により、一切の電化製品を使うことがそもそも出来なかった。
そのためAは、これまで肌身離さず持っていたスマホを実家に置いて来ており、スマホもパソコンもインターネットもない、SNSもない世界で生きて行かねばならなかった。
それでも、そんな生活が苦だったわけではない。
恐ろしいことに、ホグワーツでは朝から夕方まで実にたくさんの授業を受けなければならず、また宿題も山のように出た。
呪文学、薬草学、魔法史に、闇の魔術による防衛術なんかまで──
5年生からの転入というただでさえ特別な境遇にいたAは、同級生達よりも尚必死になって勉強しなければならならず、正直、SNSどころではなかったというのが本音だ。
そんな生活を送る中で、入学以来すっかり仲良くなった寮生達がいた。
ミンギュ、ミョンホ(ディエイトが呼びにくいので、結局ミョンホと呼ぶことにした)、ドギョムの3人だ。
彼らとは寝るとき・お風呂・トイレ以外は四六時中一緒にいる程で、常に会話が尽きなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 456人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
七瀬(プロフ) - あわさん» うわ〜ありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです〜！！また遊びに来てくださいね。 (11月23日 13時) (
レス) id: b3d00b40ee (このIDを非表示/違反報告)
あわ(プロフ) - 私が求めてたのはこれだったんだ (11月11日 23時) (レス) @page7 id: a26e70e8e6 (このIDを非表示/違反報告)
七瀬(プロフ) - 翡翠さん» 良い意味に解釈していいのかわからないものの…見つけてくださってありがとうございます！ (11月11日 22時) (レス) id: b3d00b40ee (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - とんでもねえ作品見つけた (11月6日 0時) (レス) @page5 id: ffb83b80cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：七瀬 | 作成日時：2023年11月5日 21時
