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翌日の変身術の授業は、散々な結果になった。
変身術の教授であるミネルバ・マクゴナガルは、ひっつめた髷《まげ》髪に鋭い眼光が四角い眼鏡の奥から飛んでくるような先生で、厳格な指導をすることで有名だった。
この日、転入生であるAも容赦なく怒られてしまった。夕方、すべての授業が終わると、Aは一人トボトボと重い足取りで図書室へ向かった。
正解を回答出来なかった罰として、後日個人的に小テストをすると言われてしまったのだ。
ギイ、と重厚な扉を開けると、どこか古めかしい気配が漂う広い空間に出た。
そこは中二階建ての造りになっており、見上げるほど高い天井にはシャンデリアが幾つもぶら下がっている。その天井ギリギリまで届く書棚に、何千、何万冊というおびただしい数の本が一面にびっしりと並んでいた。ホグワーツ城随一の図書室だ。
室内はしんとして、物音一つしない。
初めて図書室に足を踏み入れたAは、慎重に、ゆっくりと周囲を見回しながら中を歩いた。こんなにたくさんの本は見たことがなかった。
金の文様が縁どられた書棚の他には、一枚板の大きなテーブルや、座り心地が良さそうな四脚椅子が数えきれないほど置かれている。その隙間を縫うように、羽根ペンや丸まった羊皮紙、魔法書なんかが優雅に空中を飛んでいた。
床は大理石で、ぴかぴかと滑りそうなくらい磨かれているフロアもあれば、コーナーによっては真紅のビロードの絨毯が敷かれている箇所もある。
ゴシックとロマネスク様式の建築が見事な空間に、ただただAは見惚れた。
『凄い…』
Aは、一気にこの空間の虜《とりこ》になった。面白そうな本がいっぱいある。
それに、もうすぐ夕飯時だからなのか、人影はまったくない。これなら集中出来そうだ。
多少めげていた気を奮い立たせて、Aは、早速先生に課題として指定された本の収拾を始めた。
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「魔術師マーリンによるびっくり変身術」
「これであなたもマスター!誰でも出来る変身と解除方法」
「歴史は語る 〜真実は七変化の元に〜」
「究極の魔術 ”動物もどき”とその実態」
マクゴナガル先生の課題本は4冊で、どれも初心者向けのものばかりだった。先生から言われた言葉を思い浮かべる。
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七瀬(プロフ) - あわさん» うわ〜ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです〜!!また遊びに来てくださいね。 (11月23日 13時) (レス) id: b3d00b40ee (このIDを非表示/違反報告)
あわ(プロフ) - 私が求めてたのはこれだったんだ (11月11日 23時) (レス) @page7 id: a26e70e8e6 (このIDを非表示/違反報告)
七瀬(プロフ) - 翡翠さん» 良い意味に解釈していいのかわからないものの…見つけてくださってありがとうございます! (11月11日 22時) (レス) id: b3d00b40ee (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - とんでもねえ作品見つけた (11月6日 0時) (レス) @page5 id: ffb83b80cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:七瀬 | 作成日時:2023年11月5日 21時