空腹 ページ21
「お、おなかすいたぁ…」
帰りの電車の中。
席に座り壁に寄りかかる様にしてお腹を押さえうずくまるのは瞬矢A。
「(…お昼ご飯、食べておけばよかった…。)」
Aは、最後にまともに食事をとったのはいつだったか考えた。
お腹が空けば手頃なお菓子でごまかして食事を疎かにしてしまうAにはそれが日常だったが高校に入ってからは調子が変わってきていた。
今日に関していえば午前中の授業。
さすがヒーロー科、内容が体力づくりだった為疲れてきってしまった。
そして昼休み、なんと席で伏せて寝てしまった。
途中で誰かに話しかけられた様な気がしたが眠気には勝てずそのまま熟睡。
起きたのは授業の始まる5分前。
その事に我ながら感心して気分良く午後の授業を受けた。
そこまではよかった。帰ろうと駅で電車に乗った瞬間気が抜けたのかお腹がぐぅーっと鳴り一気に空腹感が訪れた。
そして今に至る。
体に力が入らずやる気も起きない。
どうしようかな、と思っていたら聞こえてきたアナウンスに驚愕した。
「(…えっ！！どこここ！？いつもと違う駅！？)」
降りる駅を通り過ぎてしまった。
自分の降りる駅しか把握していなかったAなのでここがどこなのか分からないのでとりあえず急いで降りた。
「(な、なんとか、降りたけど、そろそろやばい…おなかすいたよぉぉ。)」
歩くのも大変なくらいの空腹にとりあえずベンチに座りカバンを抱きしめるようにうずくまる。
もうだめかも…。
「………おい。」
「………。」
「……おいって言ってんだろーがクソが！」
「………え、あれ爆豪、くん？」
近くで聞こえてきた声に話かけられるまで全く気付かなかったA。怒りを含んだ声でやっと人が目の前にいた事に気付く。
「爆豪君、どうしたの、」
「どうしたの、じゃねーんだよクソが。こっちのセリフだわ。こんな所でうずくまってんじゃねーよ邪魔だ。」
ベンチに座っているから通行の邪魔にはなってはいないはずだけどいつもみたいに返す元気もないAはごめん、と返事をした。
「…何してんだよ。」
「……え？」
「だから！こんな所で何してんだよって聞いてんだろーがクソ女！！」
正直に聞けない爆豪。
からかいたい。本当はからかいたいが、そんな気力は残っていない。
「………おなか、すいた。」
「……はぁ！？」
「死にそう…。」
やっとの思いで呟いたAの言葉に爆豪は唖然とした。
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作者名：nanase | 作成日時：2020年10月6日 23時
