旅立ちの前 ページ2
「…本当に一人暮らしするの？」
どこか寂しそうに呟くのは、背中に真っ赤な羽を持つ男、ホークス。
いつもは飄々としている男も今は心配そうに目の前の人物を見つめている。
「…もー。今更それ聞くの？もう決まった事だよ？」
先程から心配そうに少し離れた場所からAを見てるホークスに笑って答えたA。
荷造りをする手を止めずにいると、やがて観念した様にAへと近付いた。
「あーあ、寂しくなるなぁ。」
「私も〜。」
「…ねぇ、本当にそう思ってる？全然そうは見えないんだけど。」
高校進学と同時に九州から離れ、学校の近くへと一人暮らしをする。
ヴィランが起こした襲撃事件により両親を亡くしたAは事件を解決したホークスにそのまま引き取ってもらっていた。
とはいっても正直な話、遺産がけっこうあったので金銭面では困る事はなかったので、生活面で面倒を見てくれていた。
何故ホークスがAを引き取ってくれたのか、その理由を過去にAがホークスに聞いた事はない。
1人じゃない、その事実があるだけで良かったのだ。
でもAはお世話になったこの家を出て行く。もしかしたらまたいつかここへ戻ってくる事もあるかもしれない。先の事は分からない。
でもここを離れるのは事実であり、何故か急にその理由を聞きたくなった。
「…ねぇ、ホークス。」
「ん？」
「…なんで私を引き取ってくれたの？普通はいないよね、助けた子供をそのまま引き取る人って。」
顔色を伺う様にホークスを見つめるA。
そもそもこの男が正直に話してくれる根拠は無い。いつもの様に飄々と笑って話を逸らすかもしれない。
それはそれでいいのかもしれない。
言いたくないのなら無理に聞き出そうとは思わない。
そんな事でAがホークスを嫌になる事はあり得ないのだから。
「…Aの目がずっと頭から離れなかった。」
「目？」
「…そう。何もかも失った絶望の目。」
目を伏せていたホークスは顔を上げ、Aをじっと見ながら続きを話す。
「…確かに柄にも無い事をしたなって思う。でも俺が助けた後、両親が助からない事が分かった時泣きもせずただ感情を殺していたAをほっとくなんて俺には出来なかったんだ。」
そう言ってホークスは悲しそうに笑う。
「…そう、だったんだ。私、そんな目をしていたんだね…。」
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作者名：nanase | 作成日時：2020年10月6日 23時
