2話 ページ3
この後Aも挨拶をし終え､ 自由時間ということで皆は自由に過ごしていた｡
Aは部屋に戻ろうとする時､ 一人の少年がAの元へと駆け寄ってきた｡ 顔を見れば知り合いの顔で､ Aはふっと微笑みを浮かべる｡
「久しぶり､ "西蔭"くん｡」
「久しぶりです､ Aさん｡ まさかAさんも日本代表に選ばれるとは……サッカーをしていたんですね｡ 知りませんでした｡」
駆け寄ってきた少年は同じクラスの"西蔭政也"だ｡
西蔭が野坂と同じ様にAにも敬語を使うのは､ 以前野坂が脳腫瘍で倒れた時にAが助けたらしい｡ その時に大袈裟に命の恩人だと､ Aを尊敬している為､ 敬語を使っているらしい｡
「サッカーやってたこと､ 教えてないからね｡ …ところで彼は､ 手術で今居ないのね」
Aは同じクラスの"野坂悠馬"の姿が見えなかった事を思い出して口に出すと､ 西蔭は少し俯いてしまった｡
Aは"不味い事言ってしまった"と思うも､ 西蔭は言葉を紡いでくれる｡
「はい…野坂さんは手術の為､ アメリカへ発ちました｡ …ですが､ 必ず野坂さんは手術を成功させて帰ってきます｡」
西蔭は俯かせていた顔を上げて決心したような表情で名前を見詰めながら言い放った｡
Aは小さく微笑みを浮かべると"そうね"と述べた｡
「早く野坂くんと一緒にプレー出来るといいわね」
「はい!」
Aの言葉を聞いて､ 西蔭は嬉しそうに元気よく返事を返した｡
そんなやり取りを遠くから見ていた少年の影が一人｡
その少年の瞳には､ Aを捉えている｡
「"紅月 A"……一応警戒しておくべきか｡」
そう小さく呟いた少年に､ Aたちは気が付かない────｡
.
そして一週間が経った｡ FFI 予選第一試合が始まろうとしていた｡
Aはスタメンが決まり､ 嬉しそうな笑みを浮かべていた｡
「スタメンおめでとうございます､ Aさん」
「ふふ､ ありがとう西蔭くん｡ 頑張ってくるよ」
祝いの言葉を掛ける西蔭にAは微笑みながら､ 優しく肩をぽんぽんと叩いた｡
そんな姿を見ていた灰崎は不思議そうにAを見詰めていた｡
「……なんか野坂みたいだな｡」
「確かに…髪色とか似ていますね」
ぽつりと呟いた灰崎の言葉に、マネージャーの杏奈が小さく頷きながら述べた｡
灰崎と杏奈の中では､ Aの第一印象は"野坂みたい"となった｡
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作者名：りはる x他1人 | 作成日時：2020年3月20日 16時
